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101番目の舶ィ語
第八話。千夜一夜夢物語Bハグは嬉し涙と共に……
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は何も解らない恐怖に怯えるように、周囲の人々や白い手を交互に見るとその視線が自身の携帯電話のストラップに行った。昔の俺、一文字が理亜にプレゼントした『眠り猫』のストラップだ。縋るようにそのストラップを握り締めた。

「これがさっき注意された人攫いでしょうか?」

理亜はやや震える口調で話しながらも、ただ怖がるのではなく、情報を一つ一つ整理していた。
直後、理亜の体が前に飛びつき、ぐるりと回転して立ち上がる!
理亜がいた場所にはやはり白い手が生えていた。
白い手が生えるより速く、それを感知出来るのだとしたら______理亜の才能は本当に、聖女や女神とか、そういった超常的なものなのかもしれない。
それはおそらく……。
『前兆の感知』。
理亜の意思とは関係なく働く、超感覚的な力なのだろう。

「もし、この『手』が私を攫うというだけなら、こうして避け続けていればなんとかなりそうですが。それではいつか私が疲れ果ててしまいますしね」

そして、理亜本人がその才能が『ロア』にも通じると把握しているようだった。
自身の才能を把握した理亜。彼女が落ち着きを取り戻していくのに、そう時間はかからなかった。
まるで、こういった経験が過去にあるかのように理亜の体は動く。

「それにしても、どうしてでしょうね。これを回避し続けるだけなら出来る気がします。以前にもこういったものを受けたような……」

理亜も同じことを感じていたようで、そう呟くと。

「ならばどこまで出来るのか。確かめてみましょうかっ」

自分自身を試すかのように走り始めた。







走り続ける間も、理亜はヒラリヒラリと地面から生えてくる白い手を躱し続けていた。
時には通行人にぶつかりそうになりながらも、走行中の車を避けたりしつつ、転ばないようにアクロバティックに。理亜は通行人が自分のことを気にもとめないという不思議な世界の中を我が物のように駆け抜けていく。
向かっている場所は一つ。
かつて、俺がキリカと戦った場所。
市立十二宮公園。
戦闘では広い場所で対処するのは戦いの基本だが、相手から狙われやすいというリスクもある。
それをどうするつもりなのか。
公園の入口が目の前に迫って来たその時。

「はっ」

公園入口の柵の両側。そこに白い手が伸びたのを見て。理亜は柵に手を付くことで高らかにジャンプして乗り越える!
理亜はこんなにも運動神経が良かったのか、と驚きつつも。Dフォンを受け取った時点でハーフロアとして片足を突っ込んだ状態でいるのだから当然か、と思い直す。
理亜が柵を乗り越えた瞬間、スカートを抑えていた為、見えなかったが兄としては安心したような、ちょっと残念なような……複雑な気分になった。

「ハァ、ハァ、ハァ……」


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