外伝 メイドのお仕事
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を、オーネストは一切求めない。
誰よりも彼には欲がない。自分が自分であるという究極の我儘を除いて、何もない。
ミアの主張は、我儘や拘りを捨てて当たり前の幸せを求めること。
オーネストの主張は、我儘だけで生き、他の何も求めないまま死ぬこと。
決して交わる日の来ない価値観は、今も一貫している。
「あんなくそガキは大嫌いです。価値観以外の性格も最悪ですし、関わらない方がいい。それでも、そこで関わらないという選択をするのは……それはオーネストの生き方を心のどこかで認めることになる。だからミアさんは絶対に引きたくなくて、いつも喧嘩になるんでしょうね……」
「リューはそうじゃないの?」
「そういう思いもあります。でも、それ以上に思っているのは――」
リューはいつでも、誰かに生きてほしいと思っている。しかし、この時彼女が発したのは、それとは少しだけ違った思いだった。それを聞いたシルは、「やっぱりオーネストさんの事が大好きなんだ」とにやにやし、リューはいつもの苦虫フェイスで「違いますからね」とぼやいた。
メイドたちの夜は、更けていく。
= =
「でさぁ……天界って結局どこにあんの?神はみんな上から来たっていうし、成層圏に浮遊大陸でもあんのかな?」
「ない。宇宙にスペースコロニーがある訳でもないぞ。天界はそう言う物理的な場所にあるんじゃなくて、人間の三次元的な感覚では認識できない上位領域に存在する。そことこの星の境界として空が丁度いいから『上から来た』ってことになるだけだ」
「上位領域ねぇ……俺達が行ったらどうなんの?」
「さぁな。ただ、上位領域ってのは本来肉眼で確認できない『魂』が物質的、情報的に捉えられる世界だ。仮説としては魂だけの存在として上位領域に突入するか――あるいは天界の領域形態に相応しい次元の存在に変容するのかもな。何なら試しに行くか?」
「行ってみよっかなぁ……」
「行かんでよろしい」
ドンッ!!と音を立ててジョッキとワインボトルをテーブルに置いたリューは呆れ果てた顔でため息をつく。
「あ、リューさんどうも。さぁ、天界の話は後にして飲むぞ〜!」
「天界に貴方がたを行かせたら世界が終わりそうなので存分に飲んで記憶を飛ばしてください」
アズはいつも通りへらっと笑いながらドワーフ用の大型ジョッキを一気飲みし、オーネストはグラスにワインをついでテイスティングしている。とてつもなく対照的だが、前者が『告死天使』で後者が『狂闘士』であることを考えると何かが間違っている光景だ。
「時々思うのですが、酒の味が分かるのですか、貴方がたは」
「何となくしかわかんないです!」
「飲めればいい。不味いのは御免だがな。前に出してきた西部産4年物の赤は酷い味だった
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