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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
外伝 メイドのお仕事
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ーションの治療が上手く行かねぇ。お前が……さっさと摘出しろ』
『ファッ!?』

 何とこの後、店内でオーネストの指示の元にヴェルトールによる骨の摘出作業が始まってしまった。体内のズタズタになった血管や筋肉、内臓器官。垂れ流される失血量を目の前に顔面蒼白ながら奇跡のナイフとフォーク捌きで骨を摘出していくヴェルトールに、その横で冷や汗を垂らしながらオーネストへポーションを飲ませ続けるキャロライン。食事道具で人間の肉を抉る余りにも衝撃的な光景に、あのミアさんも救急箱片手に呆然としていたくらいである。

 やがて、お前もういっそ素直に死ねよと思うくらいの血液が店の床に広がった頃――骨の摘出が終了したことを確認したオーネストは、『少し冬眠する』と言ってそのまま眠り始めた。全身ズタボロな上に体内の骨がかなり欠落した状態だったが、オーネストは山を越えたのだ。麻酔抜きでこれとか、もう人として死んでろよという話である。

 この日、店は休み。翌日もオーネストの垂れ流した血を片づけるために丸一日休業。更に翌日にあまりにも沁み込み過ぎていてこのままではいけないとプチリフォームが始まったことで三日連続の休業になった。また、これより暫くメイドたちはナイフとフォークと生肉が直視できない状態になり、トラウマを克服して店が再開するのに2週間もかかる大事件になった。

 なお、オーネストは手術から7日後に骨も含めて完全回復という形で意識を取り戻した。
 いくらポーションでもなくなった骨は生えない筈なのだが、本当に人間なんだろうかこいつ。

「………起きた時の第一声、知っていますか?」
「知ってる。『くそったれ。また死に損なった』……でしょ?それで死ぬほど心配してたリューは我慢ならなくて、オーネストさんのほっぺを引っ叩いたのよねー?」
「当たり前です。叩いた瞬間に叩き返してきやがりましたが」

 ぶすっと不機嫌そうな表情になるリューは、あれにはミアさんも激怒していました、と続けた。

「あの子は、あの戦いで死ぬつもりだったんですよ。あの時だけじゃない……ダンジョンに無謀な突撃を続けたのも、誰も味方を作ろうとしないのも、自殺者が死ぬ前に身辺整理をするのと一緒です」
「そうかな?その割にはちゃんと戻ってきてるし、自殺者ならそれこそ自殺するんじゃないの?」
「そう、ですよね……死ぬ気なのに、自殺する気ではないんだと思います。私にも分かりませんし、理解したくもありません」

 ミアは冒険者にいつも「生き残ること」を説く。
 死すれば何も残らず、それで終わってしまうからだ。極めて単純な原理――生き残れない者は決して勝者になりえないという現実。それを、オーネストはいつだって否定する。だからミアは堪らなくオーネストが許せないのだろう。
 人として当たり前の幸せ
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