外伝 メイドのお仕事
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た)と足袋が、彼女の出身地を物語っている。
『主神様は「あすとれあ」様の事、高く評価してはりました。頭ごなしに全部肯定しとる訳やあらしまへんが……人の心はあっちゅう間に『邪』へと心を揺すられますからなぁ。………たまぁに、性根の底からドス黒いのもいるけんどね』
彼女には彼女なりの考え方がある。その声色からは正義は感じられないが、悪への強烈な殺意が感じ取れる。下手をすれば裏返って悪に染まるかの如き、苛烈な殺意が。オーネストの放つ破滅的な殺意も常軌を逸しているが、彼女のそれは底なし沼のような際限のない憎しみを覚えさせた。
『………まぁ、『疾風』先輩の粛清対象にはならへんと思いますんで、よろしゅう。地べたに転がっとるしょーもない連中は放っておきますんで、お好きに』
『賞金稼ぎ』達は地面に放置されている。元々殺す気だった訳でもなく、恐らくは偶然見かけたが故の単なる警告だったのだろう。犯罪はしたことがあるだろうが、どうせ証拠も残っていない。一部には失禁したのか股座を濡らす者もいたので、近寄りたくない。放っておくことにした。
『あ、それとこれ。ああしには必要あらしまへんので』
するすると上から糸で結ばれた小瓶が降りてくる。どうやらこの連中が持っていた薬のようだ。受け取ると糸が勝手に外れて空に消えた。糸を使った戦術というのは噂で聞いていたが、予想以上に自在に操れるらしい。
「それにしても間抜けな連中ですね。何の薬か知りませんが、あのくそガキに毒など効くわけないでしょう。一体何歳から『耐異常』のアビリティを持っていると思っているのです?」
『ほんまですわぁ。あのお方はバジリスクの猛毒を喰ろうても眉一つ動かさんお方……人間の用意したチンケな薬じゃどないしようもありまへん』
昔に一部の給仕がオーネストのミアに対する態度に我慢ならないと一服盛ったことがあったのだが、オーネストは「次から薬を盛ったときは他人に運ばせろ。手汗でバレバレだ」と言いながら一皿平らげ、何故バレたのか分からず停止している給仕におかわりまで要求したことがある。
一口食べたらトイレ直行で魔物にも効く強烈な下剤入りだったそうだが、知るかとばかりに微動だにしなかった。と、そこまで思い出したところでリューはふと気付く。
「………ん?ちょっと待ってください。貴方、もしやあのくそガキと知り合いですか?」
『ええ。深く深ぁく、旦那様の次にお慕いしてますえ?』
からりと快活で殺意のない声を上げた彼女は糸を弾いて姿を消す。
弾かれた糸がピーン、と美しい音色を奏で、静かに闇の中に融けていった。
「………なんでああいう危なそうな者とばかり知り合っているのですかね、あの子は」
しかも人妻だし……よりにもよって好かれてるし、と頭を抱え
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