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第一章
おたまじゃくし
アメリカのボルチモアの話だ。
ここに一人の小さなお菓子屋があった。店の名前をレッドリバーという。店の経営者はというとアフリカ系の若い兄ちゃんだ。名前をトミー=クラークという。
クラークは今頭を抱えていた。それは何故かというとだ。アルバイトで雇っているハイスクールの生徒であるエミー=アーノルド、赤髪でそばかすの何かの小説に出てきそうな小柄な少女にその理由を話した。今は静かなその店の中でだ。
店の中は奇麗でまとまっている。何処か十九世紀の南部の趣があるクラシックな感じの店だ。そこにカントリーロックでもかければ似合いそうだ。その店の中でだ。
クラークは困った顔でだ。エミーに言ったのである。
「おかしなこと言われたよ」
「ああ、さっきのお客さんにですね」
「だから何なんだよって思ったよ」
「うちのお店にはインパクトがない」
「だから思う様に繁盛しないってな」
「そこそこ繁盛してますけれどね」
少なくとも生活ができて尚且つアルバイトの娘を雇えるまでには経営は上手いっている。実際にクラークは生活には困ってはいない。
だがそれでもだ。彼は言われたのである。
「うちのお菓子。コーヒーもなあ」
「美味しいですよ」
「だろ?俺の爺様がケーキ職人になってそれから三代に渡って培ってきたな」
「歴史がありますよね」
「そうだよ。俺だって日々努力してるんだよ」
その自負があった。彼にしてもだ。
「美味い菓子とコーヒーがあるぜ」
「ええ。マスター自信持っていいですよ」
エミーはこうクラークに対して述べた。
「マスターのお菓子もコーヒーも。レモンティーも」
「だろ?で、それでな」
「インパクトですか」
「外観も悪くないだろ」
それについても自分から言うクラークだった。
「デコレーションとかも勉強してるからな」
「ええ、本当に」
「それで何だよ。インパクトないってな」
難しい顔になってだ。クラークは首を捻ってエミーに言った。
「ゴロツキの言い掛かりかよ」
「ゴロツキだったらその時は」
「ノックアウトだよ」
クラークはその骨ばった、お菓子屋には見えない拳を掲げて言い切った。
「これでもハイスクールのヘビー級チャンプだからな」
「で、その拳で」
「ああ、ノックアウトしてやるよ」
「学生チャンプの称号は伊達じゃないですからね」
「だからな。そんなゴロツキだったらそうしてやるけれどな」
「何か違う感じですね」
「そうなんだよな」
難しい顔でまた言うクラークだった。
「インパクトなあ。それな」
「やっぱりただの言い掛かりじゃないんですか?」
「だよな。じゃあまたお客さんが来たらな」
「はい、美味しいお菓子
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