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Blue Rose
第三話 変わらない声その一

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                 第三話  変わらない声
 優花は音楽の授業中に先生に言われた。
「蓮見君は本当にいい声よね」
「そうですか」
「ええ、もう十六よね」
「はい」
「普通十六にもなれば」
 先生は三十代半ばの女性だ、気品と知性のある外見である。
「声変わりをしてるのよ」
「よく言われます」
「それで声が変わるのよ」
「大人の男の人の声にですよね」
「それで歌う時もね」
 その時もとだ、先生は優花に言うのだった。
「声域が変わって」
「確かテノールとか」
「バリトン、バスってあるの」
 先生はこの声の域も話した。
「大きく分けて三つね」
「男の人の声域ですね」
「歌う時のね」
「それで僕の声は」
「テノールよりも高い」 
 先生は考える顔で優花に話していった。
「ボーイ=ソプラノね」
「ソプラノは女の人の声域ですよね」
「そうよ、それでボーイ=ソプラノはね」
「男の子のですね」
「ソプラノよ」
 それになるというのだ。
「蓮見君はそれになるわ」
「十六でもですか」
「というか」
 先生はさらに深く考える顔になりまた言った。
「蓮見君の声の色何か」
「何か?」
「前よりね」
 考える顔での言葉だった。
「声が女の子みたいな感じになっているわ」
「声域がですか?」
「声域というか声の色がね」
 それがというのだ。
「女の子みたいになってきていて。声域もそのままで」
「っていうと僕は」
「ええ、女の子そのものの声になってきているわ」
 こう話すのだった。
「先生そんな気がするの」
「そうなんですか」
「歌声は特にね」
 それがというのだ。
「そうなってきているわ」
「声がそうなんですか」
「喉仏がないし身体つきも」
 先生は優花のそうしたところも見て言った。
「女の子みたいだから」
「そのことも言われてますけれど」
「気にしているかしら」
「いえ、そうかなって思うだけで」
 特にとだ、優花は先生に答えた。
「そこまではです」
「だといいけれどね」
「はい、けれどそんなにですか」
「ええ、女の子みたいな奇麗な声よ」
 今度は褒めた言葉だった、完全に。
「歌手になれるかもね」
「そんな、無理ですよ」
「いえ、男の人のソプラノ歌手もいるから」
 音楽教師ならではの言葉だった。
「蓮見君もね」
「男のソプラノ歌手としてですか」
「やっていけるかも知れないわよ」
「そんなことは」
「確か蓮見君部活は美術部よね」
「はい、そうです」
「音楽には興味ないかしら」
 今度はスカウトだった。
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