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戦国異伝
第二百四十六話 妖術破りその十

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「それを殿にお願いするぞ」
「さすれば」
「ではじゃ」
 羽柴は二人にあらためて言った。
「攻めるぞ」
「はい、それでは」
「褒美の為に」
「御主達もじゃ」
 羽柴は自身が率いる兵達にも言った。
「褒美が欲しいな」
「はい、是非」
「それではですな」
「ここで」
「思う存分働け、褒美は働く分だけ貰える」
 だからこそというのだ。
「好きなだけ褒美を手に入れるのじゃ」
「そうさせてもらいます」
「是非共」
 兵達も応えてだ、そうして。
 誰もが果敢に攻める、そしてだった。
 彼等も獅子奮迅の働きをし敵を次々に倒していく、魔界衆の者達は最早薙ぎ倒されるだけだった。それを見てだった。
 老人にだ、棟梁達が言った。
「御前、最早です」
「戦の趨勢は決したかと」
「妖術を破られ」
「そのうえで」
「敵はここぞとばかりに攻めて来ます」
「これでは」
「何故じゃ」
 苦々しい、呆然とはなってはいないがだ。
 そうなっている顔でだ、老人は言った。
「妖術が破られた」
「それはわかりませぬが」
「確かにです」
「妖術は破られ」
「我等の攻めは効きませんでした」
「わからぬ」
 まただった、苦々しい顔で老人は言った。
「しかし攻めはじゃ」
「効かなかった」
「そのことは確かですな」
「そして敵は攻めてきて」
「止まりませぬ」
「これではどうしようもない」
 老人はこう言うしかなかった、最早。
 その彼にだ、百地が言った。
「しかし御前」
「このままではじゃな」
「我等は攻められてです」
「わかっておる、滅びるだけじゃ」
「それでは」
「こうなっては仕方がない」 
 忌々しげな声のままでだ、老人は言った。
「ここは下がるぞ」
「そうされますか」
「逃げる術は使えるな」
「はい」
 高田が右手を前に出してそこに黒い渦を出した、そのうえで老人に言った。
「出せまする」
「その妖術は使えるか」
「ではじゃ」
「はい、逃げますか」
「ここは逃げてじゃ」
 そして、というのだ。
「再び戦う」
「そうされますか」
「ここで滅んでなるものか」 
 目を血走らせてだ、老人はこうも言った。
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