後編
2.合同作戦
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「い、いや、自分で行くクマ」
理由はさっぱりわからんが、ビス子とやりあったあと妙に気恥ずかしい気分になった。それは妖怪アホ毛女も同じようで、なんだか妙にしおらしくなって自分でおかわりに向かっていた。
球磨がおかわりに向かっている最中、テーブルには俺と北上が残された。北上は実に美味しそうに、落ち着いて味噌汁を堪能している。今日の味噌汁は提督さん手作りの田舎味噌で作った素朴な味噌汁。提督さんの味噌汁レパートリーの中でも、赤だしの次ぐらいに絶品なやつだ。
「ずず……ハル」
「ん?」
「もう素直に認めちゃったら?」
「何をだよ」
「球磨姉、ちょっと変だけどおすすめだよハル兄さん?」
「兄さんは止めろ」
「じゃあハルお兄ちゃん? それとも“くまねえ”みたいな感じでハルにい?」
「全部却下だ」
自然と球磨に目が行く俺と北上。球磨はビス子とともにおひつにしゃもじを突っ込んでいたが、ビス子に何かを耳打ちされた後、『そっ……そんなんじゃないクマッ!!』とうろたえていた。
「平和だね〜……ずずっ」
「俺の心は地獄絵図だけどな」
「よく言うよ。まぁお幸せに。義理の妹として応援してるからねー」
「アホ」
とはいえ、確かに平和だ。数日後は合同作戦が控えているというのに、皆落ち着き払い、日常を楽しんでいた。
あるいは、意識して楽しんでいるのかもしれない。こうやって晩飯時に馬鹿騒ぎをするのも、風呂上がりにみんなでラムネを楽しむのも……夜になったらおれの居住スペースに集まって酒を飲みながら楽しく過ごすのも、明日命をもぎ取られるかも知れないからこそ、意識して今日の生を満喫しているのかもしれない。
ビス子にからかわれて、顔を真っ赤にしながらぷんすか怒っている球磨を眺めながら、おれはそんなことを思っていた。暁ちゃんという身近な存在の理不尽な死を経験して、そんなことを考えるようになった俺だった。
合同作戦は、数日後だ。
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