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鎮守府の床屋
後編
2.合同作戦
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緒なんだろ? なら大丈夫だ」
「もちろんだクマ。ちゃんと帰ってくるから安心するクマ!」

 そう答える球磨の笑顔が心強い。あの肝試しの時のような心強さと安心が、俺の心に広がっていく。あの肝試し以来、この妖怪アホ毛女に妙な安心感というか頼りがいを感じつつある自分が少々恥ずかしかったが……それも仕方ない。頼りがいがあるこいつが悪い。

「ハル、とりあえず球磨におかわりをよこすクマ!」
「自分でよそってこい。俺は自分の飯を食うのに忙しいんだ」
「床屋の風上にもおけないヤツだクマッ!」
「どこに晩飯の配膳が仕事の床屋がいるんだ?! ビス子を見てみろ! 今まさに自分で飯をよそいに言ってるぞ!!」

 そう言いながら、お茶碗を手に持って立ち上がるビス子を指さした。油断していたためなのか、ビス子は俺に指さされた途端、必要以上にビクンとしていた。

「え?! わ、私がどうしたの?!」
「ハルがおかわりをよそってくれないクマ!!」
「言ってやれビス子! 艦娘なら自分の飯のおかわりぐらい自分でよそいに行けといってやるんだッ!!」

 ビス子はしばらく考える素振りを見せ、お茶碗をテーブルに置いた。その後、急にニヤーっとほくそ笑み、美人な顔をひどく歪ませて、こっちをニヤニヤと見つめた。やばい。これは反撃される。しかもメンタル的な意味で。

「相変わらず仲いいわねー。これが日本の夫婦げんかってやつかしら?」
「う……うるせー妖怪ゲルマン女! だいたいなんでドイツ人のお前がそんなにうまそうに日本食食ってるんだよ!! お前がところてん食いながら『ノリの香りがたまらないわ』て口走った日にはカルチャーショックを感じたわ逆に!!」
「そ……そうだクマ!! だいたいドイツ人の分際でたまごかけごはんを平気な顔で食べるのは止めるクマ! もうちょっと納豆に拒否反応を示せクマ!!」
「そうだ球磨! 言ってやれ!! ドイツ人のくせに俺に『納豆の食べ方を知らないのねハル』とか言って納豆を語るな!!」
「ステーキに迷わずわさび醤油つけて食べて『生醤油が五臓六腑に染みこんでいくわ……』ておっさん声で口走るドイツ人なんて聞いたことないクマッ!!」

 俺達をからかってくるビス子に罵詈雑言を浴びせる俺と球磨だが、それらすべてを涼しい顔で受け流したビス子は……

「……ま、仲良きことは美しきかなってやつね。どちらにしろ痴話喧嘩に周囲を巻き込むのもほどほどにするのよ」

 と言い残し、再びお茶碗を手にとっておかわりに向かっていった。俺と球磨は、ビス子の余裕の前に一矢も報いることが出来ず、完全に敗北した。

「う……」
「ク、クマ……」
「……ずず……あーお味噌汁おいし……球磨姉、おかわりはいいの?」
「……あ、い、いくクマ」
「……お、俺が行こうか?」
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