第11話 誘い
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そう考えると怖くなった。
佐天はそっと音楽プレイヤーを力なく握った。
これを聞けば、あんなに焦がれていた能力が手に入る……
甘い悪魔のささやきが佐天の脳内に響いた。
使いなさい
このまま惨めに「無能力者」として生きるなら
一回くらい、能力者になっておいた方がいいんじゃない
で、でも安全か分からないし
いけない事だし……
構わないよ
学園都市は、あなたに何をしてくれた?
能力がないことで不利益を被ったのは誰?
使えば、補習を受けなくて良くなるよ
毎日、誰かと比べられることもないよ
私には何もない。
生まれた時からそれは決まっているのだろうか。
幾度となく体験したその気持ち。
もう嫌だと思った。
何が違うのかはっきり知りたいと思った。
能力者と無能力者
たった一文字の違いしか文面上でしか変わりしないのに。
ただの打ち消し働きをするモノが前についただけなのに……決して越えられない壁がある。
さあ、今度は君が強者になるんだよ
この世は、どう形を変えても「弱肉強食」
強い者だけが楽しく生きられる世界なんだよ
そこに佐天の同校の友人が歩いている佐天を見つけて声を掛けた。
「ルイコ――おひさ!終業式以来」
佐天は、自分の心の闇に気づかれないように作った笑顔を向けて声に応える。
「アケミ!むーちゃん、マコチンも」
「一人で何してんの?買い物?」
「う…うん、そんなとこ……アケミ達はプール?」
佐天は、三人が手に持っている水着バッグを見つけると注意をそらすように質問した。
自分に注意が向かないように……
しかし、話して楽になりたい衝動にも駆られる。
「それがスンゲ―混んでてさあ、全然泳げんかったんよ」
「できれば海とか行きたいけど、私ら全員補習あるしねー。泊りでどこにも行けん」
「あれさ――勉強の補習はわかるけど、能力の補習って納得いかないよねー。あんなん才能じゃん?」
「あ、でもさ聞いた?『幻想御手(レベルアッパー)』っての」
それに少し反応を佐天がした。何度この言葉に後ろめたさを感じたことか。
「なあにソレ?」
「あ、知ってるー!能力が上がるとかいうのでしょ」
「そうそう、どっかのサイトからダウンロードできるらしいんだけど、風紀委員(ジャッジメント)がそこを封鎖しちゃったんだって」
「えー、なんでそんなことすんのよぉ」
「今、すごい高値で取引されてるらしいよ?」
「金なんかねーよー」
「あっ、あのさ!」
そうそう、独りで使うのは怖いよね
どんなことになるかなんてわからないし……
この三人と一緒に使おうよ
良い友達を持ったね
「あたし…それ、持ってるんだけど……」
喉が異様に乾いた気がした。心臓が黒くはっきりと早く拍動するのが分かる。
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