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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
外伝黒の修羅 後編(2)
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『相も変わらず凄まじい益荒男よな。……貴君も鼻が高いだろう?』
「はっ、ですが私としてはもう少し慎重であってほしいと思います……ほんと、後をついていくのも大変です。」

 山吹の瑞鶴からの通信を受け取った黒の瑞鶴を駆る少女が嘆息する。脳裏を流れるのは彼と出会ってからの日々―――本当についていくだけで大変だ。
 それに同意の苦笑を漏らす山吹の中佐。

『ふっ確かに大変だな。だが、あのような男が未だいるのだと未来に期待も持てる、大和魂は死んではいないのだな、と。』
「そんな立派な物じゃないですよ。自立自存しているようでその実、他人がいないと自分を保てない―――本当はそんな弱い人なんです。』

 時折更新される戦術データに目を通す、彼は単機で百体以上のBETAを相手に奮戦している。
 基本、この手の正面決戦では突撃砲の砲門数が物をいう。

 しかし、このような山岳地帯では必然と動ける範囲などは限定される。その為、彼は単機のほうが動きやすいと最も接敵率高い個所の防衛を買って出て、その後方に部隊を配置し、かれが打ち漏らした個体の掃討を行っている。

 今、あそこで彼は戦っている―――どうか生き延びてほしい。

『ふむ、男女の機微は分からんが……だとすれば、奴は普通の人間だということだな。。
 愛するがゆえに、他者をそして敵を欲す。なるほど、そういう修羅もいるのだな。興味深い。』
「それは違うと思います、彼は私を愛してはいない―――それなりの情はあると自負はしていますが。」

 それがせめてもの意地、積み重ねてきたそれらを絆を言い換えるのなら他にないと思った。

『夫婦とはそういうものだろ、それに私の目から見てあいつはお前のことを愛していると思うが……アイツ自身に自覚はないだろうがな。』
「それは嬉しいんですけど、私じゃあの人の渇きも餓えも癒せない―――私じゃ、あの人を救えないんです。」

 だから、彼を救う人間が現れたら身を引こうとさえ思っていた。
 だから、それまで……彼の命を私が守り続けようと決めていた。

 ほんとは自分が彼を救いたかった、彼を守りたかった。彼の心からの笑顔を自分だけに向けてほしい。
 でも、きっとそれは叶わない夢――――自分では彼を救えないから。


『それがどうした、(かわ)いていればいい、(かつ)えていればいい………生きる場所の何を飲み、何を食らおうと満足できぬ、それでいい。それが人間だ。
 奴は至って平凡な人間だよ、幾ら願おうとも世界などちっとも思い通りにはならない。それが普通の人生というものだ。』

 この上官の言葉はしばし哲学的で要領を得ないことがあるが、殆どのことにおいて的を得ている。
 確かに、忠亮は普通の人間の定義を十二分に満たしている。

「………
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