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八神家の養父切嗣
二十九話:休暇の始まり
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とう、アインス。僕は―――犠牲になった者達全てを報い、救いたい」

 その想いだけは本物だ。どれだけ過程が、今までの人生が間違っていたとしてもそれだけは言える。その為に彼は悪魔との契約を結んだ。自らが正義の味方などというものを目指してしまったが故に失われた命に報いるために。彼らに救いを与えることだけを考えて。

「ああ、お前のその願いに私は協力しよう」

 ベッドのシーツを様々な想いからきつく握りしめる切嗣の手の上に自分の手を重ね合わせてアインスは憐れむような、悲しむような表情を作る。そのままどれほどの時間が経ったのかもわからないほどに沈黙が部屋を支配していたがやがて一つの通信でそれが破られる。

【突然の連絡申し訳ありません。ドクターからの連絡です、衛宮切嗣】
「ウーノか……言ってくれ」
【機動六課が動いたのでルーテシアお嬢様の補助を行っていただきたいと】
「……スバル・ナカジマも居るということだな?」
【はい。詳しい情報は随時ご連絡します】

 あの子が動くのならば動かなければならないだろう。心を折るのは早い方が良い。それだけ立ち直るのに時間を割けるのだから。切嗣は立ち上がると手早く準備を済ませながらマルチタスクで戦略を練り始める。同時に抑えきれない感情からある願望をポツリと漏らしてしまう。


「もう二度と、正義の味方(・・・・・)という必要悪が生まれる必要のない世界を……僕は創る」


 それが自分に唯一できる贖罪だと決めて(・・・)、男は破滅することだけを望みに歩み続ける。

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