後編
1.ひとそれぞれ
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れながらも、耳掃除の道具一式を準備することにした。
久しぶりの球磨の耳は、意外と綺麗なもんだった。ところどころ汚れてはいたが、耳掃除をしなかった期間が長い割には、汚れはそんなにひどくない。
「自分で耳掃除したのか?」
「ちょっとやってみたけど、ハルみたいにうまく出来ないクマ」
「そらそうだろう。人にやってもらったほうが汚れも綺麗に取れるしな」
会話もそこそこに、球磨の耳を綺麗にしてやる。綺麗にしたあとは、いつものようにローションを浸した綿棒で綺麗に汚れを拭き取れば終わりだ。
「耳かきは終わったぞ。次はローションいくからなー」
「クマっ」
普段ならローションに浸した綿棒を耳に突っ込んだ途端『ひぁあああ』と悲鳴を上げる球磨だが、今日の球磨は無言のままだった。違和感を覚えながらもそのまま耳を綺麗に拭いてやり、久しぶりの耳掃除は無事終了。球磨、お疲れ様でした〜。
「クマ……」
「おい。終わったぞー」
「うん」
俺の方に後頭部を向けたまま、球磨は動かなかった。
「ハル」
「ん?」
「北上は元気になったクマ」
「そっか。よかったな」
「大井が北上を支えてくれたらしいクマ」
あの日泣き崩れていた北上は、意外と立ち直るのも早かった。あの時我慢せず、思いっきり泣いて感情を発散させたのが功を奏したのかもしれない。大井って子に感謝だな。球磨と北上の妹だと聞いた。いい妹だ。
「川内ももう元気だクマ」
「だな。暁ちゃんの死を受け止めたからこそ、探照灯を沈めたんだろうな」
「他の子はどうクマ? ビス子は?」
「ビス子は今日店に来たけど、ちゃんと受け止めてたな。加古と隼鷹も多分大丈夫だ」
「よかったクマ」
球磨は変わらず、俺の膝を枕にしたまま、俺からそっぽを向いていた。そのため今、球磨がどんな表情をしているのかは俺には分からない。
でも俺は、今日この時ほど、この妖怪アホ毛女の後ろ姿を小さいと思ったことはない。
球磨は艦娘という名の軍人だ。歴戦の強者だし、いざというときには頼りになる存在だ。そして不自然なアホ毛をなびかせ、俺に暴力を振るっては俺を振り回す、迷惑この上ない存在だ。
でも、球磨はこんなに小さい女の子だ。こんなに小さい女の子が、仲間の死に直面した他の子たちを支えるため、自分は気持ちを押し殺して気丈に振舞っていたんだ。逆に言えば、どれだけ気丈に振舞っていても、球磨はこんなに小さな女の子だ。このアホ毛女が暁ちゃんの死を悼む気持ちは、他の艦娘の子たちとなんら代わりはない。
「球磨」
「クマ?」
「みんな立ち直った。元気になった。だからもういいぞ」
「……いいクマ?」
未だにそっぽを向いている球磨の頭をなでてやる。球磨の身体が少し縮こまり、球
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