後編
1.ひとそれぞれ
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ことにした。
昼寝ポイントの木の下までたどり着く。加古は……いた。今日も今日とて、温かい日差しに包まれて気持ちよさそうに寝ており、加古の鼻の頭には一匹の黄色いちょうちょがとまっていて、羽を休めていた。加古の傍らには日本酒の一升瓶が置いてあり、それが違和感を放っていた。
「加古」
「んぁあ……ぁあ、ハルか。おはよー」
俺の言葉で目を覚ました加古はむくりと立ち上がり、鼻にとまっていたちょうちょがヒラヒラと飛び、加古の頭に移動していた。
「今日も昼寝か?」
「うん。寝たら暁にも会えるかな−なんて思って」
「そっか」
「ビス子と違って、私は最期には間に合わなかったからさ……でもまぁそううまくは行かなかったよ」
眠そうに加古はそういい、恥ずかしそうに苦笑いを浮かべていた。そんな加古と話をしつつ、おれは加古の隣りに座る。この場所は今日も風が心地よく、お日様の光が温かい。気を抜くと、俺も寝転んで草の香りに包まれたくなってしまう。
加古はあの日、隼鷹、ビス子と一緒に暁ちゃんの救援に向かったメンバーの一人だった。ビス子と違って暁ちゃんが沈む場には居合わせなかったらしく、そのことをずっと悔やんでいたと聞いている。
「その一升瓶は?」
「隼鷹が。私が暁と会うんなら、これ置いてくって。二人で飲めって」
……暁ちゃんて、子どもだったよな……子どもに酒飲ますってどんな神経しとるんだあいつは……。
「知らない。でも隼鷹が言うには、『旨い酒を呑まずに轟沈させるのは忍びない』ってさ」
「なんだその男前なセリフ」
「ハルもそう思う?」
「加古もか?」
「うん」
加古と二人で、隼鷹の差し入れの一升瓶に目をやった。……少し減ってるよなこれ?
「『あたしも暁と呑みたかったから』って言って、私にくれる時にその場で開けて、一杯だけ呑んでた」
「妖怪飲兵衛女だなぁ。セリフがいちいち酒臭い」
「そうだね〜。でもさ。隼鷹らしいよね」
「だな」
真っ赤な顔をして日本酒をカッパカッパと飲み干していく隼鷹と、その傍らでコップにちょびっとだけ入った日本酒を前に、期待と緊張と恐怖が入り混じった冷や汗混じりの表情を浮かべる暁ちゃんを想像し、俺と加古は互いに目を合わせた。目があった途端にお互いプッと吹き出したあたり、おそらく加古も俺と同じ想像をしたはずだ。
「ハルも二人が飲んでるとこ想像したでしょ」
「お前も想像したろ」
「……とりあえず隼鷹には内緒にしとこう」
「そうしよう。バレたら大変そうだ」
その後、『もう一回チャレンジしてみる』と再び寝転んだ加古をその場に残し、俺は昼寝ポイントを後にした。立ち去る時、加古によく似た女の子……古鷹だったかな? その子が俺に向かって、笑顔で頭を下げている姿が
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