後編
1.ひとそれぞれ
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受けた時の球磨、覚えてるか?」
「はい。妙に達観した感じでしたよね?」
「ああ」
忘れたくとも忘れられない。あの時のことは今でもよく覚えている。ビス子たちからの報告を受けた川内は絶句し、提督さんは努めて冷静に振舞っていた。北上は『そっか〜……暁……』とぽそっと寂しそうに呟いていた。
「戦争なんだから仕方ないクマ。轟沈くらい出るクマ」
球磨のその発言を聞いて、俺は自分の耳を疑った。
暁ちゃんはお前の仲間じゃなかったのか? 今まで楽しい日や苦しい日を一緒にくぐり抜けてきた仲間じゃなかったのか? そんな仲間の死をそこまでドライに受け止めることが出来るこの球磨という女に対し、俺は瞬間的に不快な衝動を抱えた。
「お前なぁ……!!」
頭に血が上った状態の俺は、この妖怪冷血女の襟を掴み、思い切りねじり上げた。仲間の死にそんな感想しか持てないこの女と、一時でも仲良くなってしまった自分を恥だと思ったし、瞬間、こいつのことを心底軽蔑した。
「……なにするクマ?」
球磨は酷く冷静な表情のまま、怒り心頭で襟をねじり上げる俺を見つめ返した。この女……ふざけきってやがる……仲間が死んだっつーのに……!!
――すまない でも球磨姉も悲しんでることだけは分かってやってくれ
そんなやけに凛々しい女性の声が、俺の耳元で聞こえた気がした。誰の声かは分からない。でも、その声は、俺の頭から怒気を抜くには充分だった。
「……いや」
「……」
「悪かった。すまん」
「……別にいいクマ」
冷静に考えみれば、そらそうだよな。この妖怪アホ毛女は、俺以上に長い時間を、暁ちゃんと一緒に過ごしてきたんだ。たくさんの思い出を共有して、楽しい時だけじゃなくて、悲しい時や辛い時も、ずっと一緒にいた仲間だもんな。そんなお前が悲しくないはずないよな。
北上に目をやる。さっきまでそっけない素振りを見せていた北上は今、わなわなと震え始めた。
「……そんなこと言わないでよ……我慢してたのに……仕方ないことだから、我慢しようとしてたのに……」
その様子を見ていた球磨は、すぐに北上のそばに向かい、彼女の肩を後ろから支えてあげていた。
「北上。大丈夫クマ?」
「球磨姉……私、もう泣かないって決めてたのに……大井っちが……大井っちが……!!」
「大井が北上を支えてくれたクマ?」
「大井っちが……我慢しなくていいって……泣いていいなんて言うから……!!」
ついに心が決壊したかのようにわんわんと泣きはじめた北上を後ろから抱き支え、球磨が妹を案ずる姉の表情で俺を見た。俺は黙って頷き、球磨が北上のそばについていてやることを肯定した。
「姉ちゃんがついていてやるクマ。今日は帰るクマ」
北上は返事をす
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