後編
1.ひとそれぞれ
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子、おつかれ!」
「ほっ!」
ビス子の髪を乾かし終わり、両肩をポンと叩いてやる。今までと同じく、ビス子の身体に終了を告げる俺なりの優しいインパクト。
「ふぅ気持ちよかった! ハル、Danke! 今日はこれからどうするの?」
「一旦執務室に行った後、球磨が店に来る予定だ。久しぶりに耳掃除したいんだと」
「相変わらず仲がいいのね。今日も膝枕かしら?」
「勘弁してくれ……」
「仕方ないわね。一人前のレディーの私はこれ以上はからかわないわよ」
そして……ビス子は、以前よりも大人になった。本人が気付いてるかどうかは分からないが、以前に比べてほんの少しだけ、周囲の人間との距離を測るようになった。
ビス子が店を後にした後、俺は提督さんが待つ執務室に向かう。今日は売上の請求というか……基本的にバーバーちょもらんまは鎮守府の面子から代金をもらってない。その代わり売上は一週間に一度、鎮守府に一定額を一括で請求する形を取っている。そうすることで、俺は安定した売上を上げ、鎮守府側は店を好きなだけ利用出来る仕組みだ。
「……てなわけで、今週の請求書です」
「確かに受け取った。支払いは雑費を差し引いた額を来週ということで」
「ういっす」
売上といっても丸々もらうわけではない。俺は俺で、鎮守府での入浴施設の利用や食費、光熱費などを支払っている。最初はその都度金のやりとりをしていたのだが、お互い『金のやりとりがめんどくさい』という理由で、今では、毎週の売上請求額から雑費と称してそれらの生活費を差し引いた額を請求する形を取らせてもらっている。
「ふーっ……」
「おつかれですね提督さん」
「暁が轟沈したからな……事後処理やらなんやらで、ここしばらくは眠れなかったよ」
眠れない理由はそれじゃないだろう。暁ちゃんが轟沈してから今日まで、努めて冷静に振舞っている提督さんだが……俺は知っている。提督さんは、誰も見てないところで一人で声を上げて泣いていたと隼鷹が教えてくれた。最近夜中によくうなされて睡眠が取れてないようだとも教えてくれた。隼鷹は隼鷹なりに、愛する提督さんのことが心配なようだ。
「あー……おれの心配してくれるのはいいんだけどなハル。 お前にはもっと心配する相手がいるだろう」
「……ひょっとして、あの妖怪アホ毛女のこと言ってます?」
「ああ」
最初は、自身のメンタルヘルスの不調をはぐらかすためのからかいだと思ったのだが、提督さんはそんな風に話をはぐらかしたり、遠回しに物事を伝えるということが苦手だ。彼の言葉には裏はない。提督さんが『球磨が心配だ』といった時は、彼は本当に球磨を心配している時だ。
そして、実はあの妖怪アホ毛女に関しては、俺も少々気がかりな点がある。
「……暁の件の知らせを
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