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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第137話 呪詛返し
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姉と呼ぶ犬神使いの青年。しかし、先ほどの術がヤツに落ちなかった事から考えても、コイツが平良門の転生者などではない事は確実。それでも尚、自らが弟だと言い張ると言う事は――
 俺たちの事を揶揄しているのか、それとも、先ほどの雷が何故、自分に落ちる事がなく、術を放った俺に落ちたのか、その理由が分からないのか、のどちらか。

 氷空に星や月は見えず。人工の光……所々に存在する蛍光灯の灯りと、アラハバキの聖域を闇の中に浮かび上がらせているかがり火の光。その人工の光のみを光源とした夜の色は、まるで指でかき分けられるかのように濃く辺りを支配し……。
 ゆっくりと過ぎて行く時間。既に腕時計を失った俺に正確な時間を知る術はないが、確かに、最後に時間を確認してから十分は経過している以上、今年の冬至は既に始まっている可能性が高い。

 俺と弓月さんは非常に冷たい。しかし、その中に憐みを籠めた視線で日本の神道式の聖域の中に立つ犬神使いの姿を見つめ、
 さつきは目に普段以上の力……強い輝きを放ち、その彼女の霊圧の高まりを示すかのように、彼女を中心とした周囲の炎の精霊が活性化。既に温められた空気が上昇気流を発生させ、彼女の、そして、弓月さんの長い黒髪を不穏に揺らし始めている。

 ………………三分経過。
 …………五分が経過。

「――な、何故、何も起こらない?」


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