第6章 流されて異界
第137話 呪詛返し
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らんのか?」
少し手首を握る手に力を籠める俺。
「今のオマエでは単なる仇討ちにしかならない」
確かに今の俺では、邪神召喚の贄にされた人間の魂を輪廻に戻す方法は知らない。それでも、水晶宮の方の術者なら、その方法に心当たりがある人間が居るかも知れない。
手に力は籠めた。しかし、表情と口調は穏やかに。
しかし、今のオマエでは封印すると言いながら、現実にはあの犬神使いの生命を断つ心算だろう、と言う断定に近い内容を言葉の裏に隠しながら。
「最期は怨みを忘れ、父の元へと昇って行ったオマエなら理解出来るだろう?」
結局、あの犬神使いに対して怨みを晴らしたとしてもそれだけ。平良門の転生体の魂は邪神召喚の贄にされたままこの世界から消え、もう二度と転生して来る事はなくなる。
そう。あの犬神使いの魂の部分は此の世に怨みを残して死に、千年以上の間、庚申塚に封じられ続け、その間、ずっと今回召喚しようとしている邪神の影響を受け続けた平安時代の人間の魂。
身体の方はおそらくクトゥルフの魔獣。こいつはもしかすると俺に怨みがある個体の可能性も有る。
……ならば。
それならば、その魄の部分の持ち主は?
確かに外見的特徴を持った人間をでっち上げる事ぐらい、この事件を画策した這い寄る混沌からすれば児戯に等しい。おそらく簡単に為せる事でしょう。しかし、ヤツの悪意がその程度で終わるだろうか?
強い瞳で俺を睨み付けるさつき。コイツとハルヒに関しては、何時も睨み付けられているような気がしないでもないが……。
但し、普段の彼女らに関して言うのなら、明らかに虚勢、と言う色が瞳の奥深くにある事を感じる時がある。ハルヒの方に関しては、何故そのような色を感じるのか不明ですが、さつきに関して言うのなら、その理由はなんとなく分かるような気がする。
おそらく、彼女は俺が漏らしている龍気を感じている。確かに、人外の気など発生させないように極力、気を付けるようにしてはいる心算なのですが、それでも絶対ではありません。
まして彼女は能力の高い術者。一般人に比べると、そう言う方面の感度は間違いなく高い。
確かに彼女は俺が水晶宮に関係している術者だと知っています。しかし、知識として知っている、……と言うのと、人間が本能的に持って居る神霊に対する畏れとはまったく別物。
その龍気に抱いた畏れを気取らせぬ為の虚勢。
「あの、取り込み中すまないんだけど……」
妙に低姿勢。この地、高坂と言う街の中央公園の端。庚申塚のあった場所に居る二人目の男性が声を掛けて来る。
「姉上の御蔭で、召喚の呪文は唱え終わったから――」
もう直ぐ、父上の望んだ世界を作り上げる為に必要な能力が手に入りますよ。
未ださつきの事を
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