第6章 流されて異界
第137話 呪詛返し
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、その俺の強い眼光に対して逆に睨み返して来る彼女。
再び高まる緊張。さつきの周囲には、彼女の感情の高ぶりに比例するかのように小さき精霊が集まり、淡い精霊光を放ち始めている。
片や、何時の間にか俺の右斜め後ろに立った弓月さんは……今度は口を挟んで来ようとはしなかった。但し、先ほど、一瞬、強い語気でさつきを呼んだ時の雰囲気は鳴りを潜め、今では元の穏やかな気を発している。
もしかすると、先ほどのさつきの蹴りを、あの時は俺に対する本気の攻撃だと感じたのかも知れませんが……。
そう感じたとしても仕方がないだけの能力が籠められた蹴りだった事は事実ですし。
「今のオマエには任せられん。アイツは俺が封印する」
理由を口にする事なく、そう言い切る俺。その俺の右手には、昨夜ヤツを封印し損ねた際に使用しようとした紫の宝石とは違う宝石が存在していた。
さつきと、俺の周囲に集まった精霊たちが発する光を反射して、その宝石が緑と青の中間に近い色を放った。そう、それはとても綺麗なターコイズブルー。
俺の気を通し易く、石自体が持つ属性的に言っても相性の良いトルコ石……それも現実には非常に手に入れにくい高級なトルコ石を使用すれば、目の前の怨みに凝り固まった存在であろうとも、封じる事は可能。
……だと思う。
若干の不安要素……不確定な要素が頭の片隅で自己主張を行うのは無視。そもそも、完璧な策を立てるには、相手が悪過ぎる。
表面上に現われている、術者として言うのなら明らかに素人だと断じる事の出来る犬神使いなどではなく、その召喚されようとしている情報不足の蛇神が、現状で現世にどの程度の影響を及ぼす事が出来るのか分からない。それに、この事件の裏で暗躍した邪神が、どの程度、本気になってこの邪神召喚事件を達成させる心算なのかが、まったくもって不明なのも不安定な要素として存在する。
それに、そもそも、俺にここまで敵意を向ける相手を強制的に封印する事が出来るかどうかも分からない。
この部分に関して言うのなら、俺よりも上手い術者ならば、これほどの霊的強度の高い呪具を用意する必要はない、……とも思いますが。例えば、球技大会の最後の場面に現われた和也さんや、高校の担任の綾乃さんなどならば。もっとも、水晶宮からこの場を任されたのは俺ですから、その為の少々の出費は仕方がないでしょう。
尚、俺の後ろに立った切り、弓月さんも何も口を挟んで来ないと言う事は、俺の意見に同意している、と考えるべきでしょう。
「あによ! あたしにだってその程度の事は出来るわよ!」
俺の右手に向けて手を伸ばして来るが不発。見事な空振りに終わり、代わりに彼女の見た目に相応しい華奢な手首を掴む俺。
そして、
「ここまで言っても分か
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