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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第137話 呪詛返し
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るさつき。仄かに香る彼女の香りと、あれほどの動きを産み出す筋力の割に柔らかく、そして華奢な身体に多少の驚きを感じる。

「そんな事を言われても、離した途端に蹴られたら流石に解放する訳にも行かんやろうが」

 その彼女を抱き上げた状態で、そう軽口で応じる俺。あの蹴りを真面に喰らえば、俺の頭など粉々に砕かれて仕舞うでしょう。
 いくら精霊の守りに因って護られているとは言っても、頭自体は人間と同じ材料から出来上がった代物。それ自体の強度はどの生命体もそれほど違いはありません。
 尚、俺の腕は彼女の背中と膝の裏をしっかりとホールド。そして、何故か、その解放しろと腕の中で騒いでいる少女自身の腕はしっかりと俺の首に回され、自らの体勢の安定を図っている。
 ……と言うか、昨夜のハルヒに比べると流石に軽い印象。重さから言えば、朝比奈さん、ハルヒ、タバサ、そして、このさつきの順番ぐらいか。一番軽いのは実は有希なのだが、彼女の場合は、ある程度自らの重さの制御を出来る雰囲気があるので、本当の体重と言う物が分からない。

「さっき、言ったじゃないの。後はあたしに任せてあんたは寝ていなさいって!」

 そもそも、あんたは危なっかしいのよ。相手の正体を探るのに、いちいち自分の命を賭けてどうするのよ!
 腕の中で騒ぐ女子小学生。語気は荒く、彼女が怒っているのは間違いないでしょう。但し、それは俺の事を心配してくれているから。どうでも良いのなら、ここまで本気で怒ってくれる事もないはずなので、その部分に関してはちゃんと心の奥深くに刻んで置く必要がある。
 但し……。
 但し、このまま……少女を抱え上げる黒い影。その少女の声らしき甲高い声。このままでは、他者から見ると現在の俺は単なる誘拐犯以外に見えない可能性も高い……。
 もっとも、幸いにして今は夜中。更に、ここは周囲に住宅などない城跡兼中央公園。まして東北地方の冬至。こんな夜に外を出歩く凍死覚悟の酔狂な散歩者は周囲にはいなかった。

 客観的に今の自分の姿を他人から見るとどう見えるか、そう考えた瞬間、苦笑にも似た笑みが浮かぶ。
 ただ、まさか本気でケリ殺しに来るとは思わなかったけど、確かにそんな事を彼女が言っていたのも事実。
 しかし――

「悪いけど、それは出来んな」

 何を嗤っているのよ! ……などと騒ぐさつきをお姫さま抱っこの状態から解放しながら、それでも真面目な顔でそう続ける俺。

「さつき。オマエ、あの犬神使いの正体に気付いた。……そう言う事やな?」

 身長差三十センチ以上、五十センチ未満。かなり高い位置から射すくめるように彼女の瞳を見つめる。
 その瞳の鋭さに一瞬、怯むさつき。しかし、持ち前の負けん気の強さか、それともそれ以外の()()の為になのか不明ながらも
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