第6章 流されて異界
第137話 呪詛返し
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ろうとか、おちょくってやろうかな、などと考えているのが分かる口角にのみ浮かべる類の笑みを見せた俺。
「死にたいも何も、アイツが平良門ではない、……と言う証拠を見せろと言うから、見せてやっただけやで」
そもそも、この程度の事で俺が死ぬと本気でオマエさんは思っているのか?
弓月さんと対する時と比べると明らかに違う口調でそう答える俺。確かに、相手によって態度を変えている様にも感じるので少しアレですが、それでも状況に応じて多少、口調を変えるぐらいなら問題ない。
それに、今のさつきを相手に、四角四面。杓子定規の対応ばかりで相対していたら角が立つばかりで、話がちっとも前に進みませんから。
「もし、アイツの中に少しでも平良門の部分があるのなら、さっきの雷は俺ではなく、アイツに落ちていた」
更に説明を続ける俺。もっとも、こんな事をわざわざ説明しなければならないとも思えない相手、なのだが。
そう。名前を術の行使の際に使用したのはそう言う理由。故に本名や忌み名、真名などを魔法使いに対して知られてはいけない、……と言う事になる。
俺が本名を隠して偽名で暮らしているのもそれが理由。当然、偽名であったとしても絶対に安全だ、とは言えないが、それでも魔法使い相手に本名を名乗るよりは余程マシですから。
言葉を続けながら、大元帥明王呪。それに、稲荷大明神秘文と聖なる詞の合わせ技に因る封じの解除を行う俺。流石に、先ほどの術の結果を見た上で尚、あの犬神使いが平良門だ、などとさつきが主張する訳は有りませんから。
魔法の基本が理解出来ているのなら。
そう、これは呪詛返し。所謂、人を呪わば穴二つ、と言う事。わざわざ自分の身を危険に晒す事によって、さつきにあの犬神使いの青年が平良門の転生体などではない、と言う事を証明して見せた、と言う事です。
言葉が終わるか、終わらぬかの内に、さつきの両手首と両の足首を封じていた光の環が消え、彼女の周囲を覆って居た風が終息。
トンっと言う軽い表現がしっくりくる仕草で両足にて大地に降り立つさつき。何と言うか、そう言う仕草も女性と言うよりは少女。それも、かなり幼い少女のソレ。
その姿がまるで、立ち漕ぎをしていたブランコから飛び降りた時の少女のように感じて……。
その刹那――
「相馬さん!」
こめかみを目指して振り上げられる右脚。ほとんど、炎さえ出しかねない勢いで接近して来る黒のローファー。しかし、僅かに屈みながら半歩分だけ彼女に近付き、更に左腕で下から上へと力を加えられる事により完全に空を切らされるさつきの右脚。
そのまま左脚を軸に、独楽の如く回転を為そうとした彼女の細い身体を自然な形で抱き留め――
「離しなさいよ!」
鼻先三十センチの距離から俺を睨み付け
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