第6章 流されて異界
第137話 呪詛返し
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考えているのよ! 死にたいの! ねぇ、死にたいの? もし、本当に死にたいのなら、あたしが今すぐに眠らせて上げるからこの術を解きなさい!」
大丈夫。意識はしっかりとしている。封印の内側で騒いでいる女子小学生の声も良く聞こえている。
少しの皮肉を思い浮かべながらも、ゆっくりと閉じていた瞳を開く俺。尚、四肢と術を封じられた結界内から騒ぐ小学生は当然無視。先ずは自らの状態の確認。
冬枯れの芝生に上半身のみを起こした体勢。犬神使いの方はこの騒ぎの間も邪神召喚の呪文を優先する様子。
……おそらく、ヤツはアラハバキが召喚出来る事に疑いを持って居ないし、更に言うと、邪神が現われれば敵対者の俺たちなど一掃出来ると考えて居るのでしょう。
確かに顕われたのならそう成る可能性も低くはない。
蛇神が顕現すれば、ね。
自らの姉だと言って居た割には、その彼女の現状に一切の興味を示そうとしない奴に対して、かなり否定的な意見を思い浮かべながらも身体の各部のチェックを続ける。
もう布の部分を残していない学生服の上着は諦めるしかないか。……両親が残してくれた保険金その他は元の世界に残して来ているけど、この世界に連れて来ているノーム一体だけでも、当面の生活費に困る事のない程度の金を集めて来る事は可能。故に、学生服の一着ぐらい惜しくはない。ズボンの方は何とか無事。これは術で強化してあるのが一番大きな理由。その次は上半身に雷が落ちて、其処から大地に抜ける電流が発生しなかった事を意味すると思う。
つまり、すべての雷の気は俺の龍気として取り込んで仕舞った、と言う事。
シューズの方も靴底のゴムの部分が溶けているとか、一部が炎に煽られて焦げて居る……などと言う事もない。
そう考えながら、四肢の動きを確認していて左手首に視線を移し……。
――仕方がないか。
完全にダメに成った革製のベルトは交換が必要。ただ、本体の部分が直るかどうかは……。
四肢にも、そして身体にも大きな被害はなし。上半身が炎上した際に負った可能性のある火傷は、弓月さんの祝詞で回復したのでしょう。もしかすると、多少の痕は残っているかも知れませんが、俺の身体には他にも目立つ……更に、絶対に消せない聖痕のような物も残っていますから、此の上、火傷の痕がひとつやふたつ増えた所で問題はない。
そう考えながら、如意宝珠の『克』を起動。
重い兜を被った人間の姿を成り立ちに持つ『克』は、防具系のアイテムへと変化させるのに非常に相性の良い如意宝珠。
その刹那、淡い光りに包まれる俺。その俺に対して差し出される白い……華奢な手。
絶妙なタイミング。おそらく、俺の様子をつぶさに観察していたのでしょうが、それでもこのタイミングは絶妙。
弓月さんの差し出してくれた手を握る俺。
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