第6章 流されて異界
第137話 呪詛返し
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対に成功する事はない。
それが分かっているから、這い寄る混沌が犬神使いの望むままに術を、犬神の集め方を教えて、付近の土地神を封じた。
最後の最後の場面で犬神使いの企みが失敗する様を、何処かから何時もの笑みを頬に浮かべてじっと見つめている。
ヤツ自身はそう言う心算なのだと確信出来ましたから。
もっとも、成功しないのは飽くまでもこのまま、ならば。
他に何かプラスαがあれば、そんな前提など簡単に覆って仕舞う可能性も当然ある。
「我、雷公の気――」
しかし、現状の考察は中止。今度の術は俺のすべての意識を集中する必要がある。そうでなければ、さつきを納得させる事など出来はしない。
右手に呪符を。左手で印を結びながら、普段は詠唱、導印共に省略して発動させる術式を組み上げる俺。
「武神さん?」
「あんた、何を――」
一瞬、俺が何を始めたのか分からない二人。いや、弓月さんは気付いたかも知れない。声の直後に背後で人の動く気配がする。
しかし、もう遅い!
「――雷母の威勢を受け、悪鬼平良門を討つ。疾く律令の如くせよ!」
放たれる呪符。俺の周囲を吹き荒れる、大元帥明王呪が巻き起こす強風に煽られた呪符が空中……上空十メートルほどの高さで一瞬停止。
その刹那!
それまで仄かに白い光輝を放っていた呪符が完全起動。呪符の周囲に幾重にも発生した魔法陣が互いに絡み合い、別の形……それまでの複雑な紋様を描いていたソレから、単純な形へと昇華されて行く。
そして!
「止めてー!」
猛烈な光が周囲を支配。視界が完全な白へ。
彼女の絶叫が届くより早く大地を討つ雷帝の鎚。普段のソレと比べると格段に威力を増した九天応元雷声普化天尊法が討ち貫いたのは――
刹那、柏手は世界を一閃。
「諸々の禍事罪穢れを祓い給え、清め給えと申す事の由を――」
視界が白に覆われた瞬間、大地に転がる俺。しかし、そんな小細工などここでは無意味。光の速さで俺の身体を貫いた雷の気は、自らの特性に従い完全に吸収され、既に活性化していた霊気を完全に供給過剰の状態へ。
その供給過剰と成った龍気と、雷が発生させた熱が相乗効果を示し――
「天津神国津神。八百萬の神達共に聞こし食せと、恐み、恐み申す」
燃え上がる黒の学生服。しかし、上半身が完全に炎に包まれた瞬間、俺を別の光が包み込む。
これは一切の穢れを祓う祝詞。そう、死の穢れを祓う為に伊弉諾が小戸の阿波岐が原にて行った禊の様を現した祝詞が、俺に降りかかるすべての死の穢れを祓ったのだ。
「あ、あんた、何を
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