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ダンまち短編集
アイズ モンスタージャー
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程度。それでも知人が今にもモンスターの餌食になる様をボケっと見ている【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインではない!
「大丈夫ですか、シル」
「アイズさん!」
 モンスターの大きな視線を遮るように立ち構えるアイズ。彼女はほんの少し困惑していた。何故なら、相手が見たことすらないモンスターだった為だ。
 身長は3m程度。太い角を持つ目のない頭を持ち、発達した両胸には巨大な目一対ギョロギョロ忙しなく動き回っていた。背中には無数の触手が外套のように広がり、浮遊している。

(私の知らない……モンスター……)
 それこそ第1級冒険者と呼ばれるまで両手の指じゃ足りないほどの多種多様なモンスターを屠ってきたアイズだが、全く頭にない。身長にならざる負えない。もしかしたら、自分と同等、もしくはそれ以上の可能性だってある。
 しかも、今はシルを庇いながらだ。圧倒的とは言わないが、こちらが断然不利。応援が来るか、スキを付いて一緒に逃げるか……だが、ここで野放しにしようものなら住民に被害が出ることは避けられないだろう。
 ならばここで倒すしかない。それに――これは好機だ。
(未知との遭遇……!)
 冒険者は冒険してはならない。生き伸びる為なら引き際を見誤ってはならない。慎重にいけ。冒険者の新米が真っ先に教わることだ。だが、冒険をしなくては偉業は達成できない。強くなどなれない。己の限界を打ち破るのだ。

「あwせdrftgyふj」
(先手を取られた――!?)
 このモンスター存外早くアイズよりも先に行動を開始した。ただ何を言っているのかさっぱり分からない。しかし、身体が発光しているので、おそらく魔法を唱えているのだろう。というか、よくよく考えれば言語が不明だとしてもモンスターが喋るなんて聞いたこともない。もしかしたら知能が高いレアモンスターなのかもしれない。余計気が引き締まる。

 刹那アイズの周囲に視界を覆うほどではないにせよ、無数の蝿や蛾、蚊をはじめとした害虫が出現した。やはり先程モンスターがブツブツ呟いた訳は魔法の詠唱だったのだ!
「目覚めよ――エアリアル」
 こちらも即座に魔法を発動し、愛剣に風を纏わせ応戦する。本当なら奥の手である為、初っ端に使いたくなどなかった。とはいえ、女性の生理的嫌悪感が警報を鳴らすのでしのごの言ってもいられない。
 だが、悲しいかな相手は手のひらよりも小さい蟲ケラ達。思うように数を減らすことが出来ない。それどころか、肌の露出がある部分――特に太ももや頬、背中に脇をこれでもかとばかりに刺してくる。耳障りな羽音も相まって文字通り虫唾が走り、非常に気持ちが悪い。そして痒い! 
 そもそも、アイズは防具の重量を減らし、身軽に動いて敵の急所を狙うタイプなのだ。蟲を呼んだ筋肉モンスターならいざしらず、決定的に相性がよろしくな
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