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パンデミック
第七十三話「暗闇から見たもの」
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また"これ"か。





いい加減にしろよ。






まともに制御できないくせに、またこの力に縋ったのか。



何が"仲間のため"だ。






その仲間にさえ危険が及んでいるだろうが。



つくづく屑野郎だな、俺は……
















周囲に何もない、ただただ真っ暗なだけの空間。
ブランクが意識を失いながらに目覚める、彼だけの世界。

この世界で目覚めたのは、これで3度目だ。


1度目は、本部防衛作戦でスコーピオに殺されかけた時。

2度目は、先ほど適合者の亡骸を喰らった時。



しかし、この3度目は何か様子が違うらしい。



過去に"ここ"で目覚めた時は、自分の存在を自覚した直後に、思考と理性が薄れる感覚がきた。



この3度目には、その感覚がまるでない。

意識もはっきりしている。
思考も理性も、ちゃんと人間性を保っている。


「……」


ブランクは今の状況に困惑しつつ、暗闇の中に何かないかと、周囲を見渡す。

「……!?」


周りに光源は全くない。しかし、段々と目が慣れてきて、周囲の暗闇に何があるかが見えてきた。















ここは、なにもない"ただの暗闇"じゃなかった。







周囲にあったのは、黒ずんだ無数の死体の塊だった。



無数の死体が、まるで壁のように積み重なって、ブランクを囲んでいた。








下半身が消失した兵士。

頭部の左半分を齧り取られた民間人。

腹部を引き裂かれた同期。

心臓と肺を刺し貫かれた上官。






死体の一つ一つに見覚えがあった。




忘れるはずがない。






ここにある死体は、助けようとして助けられなかった人々だった。


恐怖、苦悶、絶望に染まった死に顔の一つ一つを心に刻み、その無念を背負い、戦い続けた。

何度繰り返したことか。



「………そうか、そうだったな。……俺は、犠牲にしてしまった無念を晴らすために……戦ってきたんだ」




自分を取り囲む死体の中心で、そっと目を閉じた。
死者たちに黙とうを捧げ、その無念の全てを背負い戦い続けるために。












再び目を開けた時、ブランクの世界に一つの変化が生じた。





死体の暗闇の真ん中、自分の正面に誰かが立っている。

暗くて顔は見えない。ただ、薄ぼんやりとシルエットは確認できる
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