第七十三話「暗闇から見たもの」
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
また"これ"か。
いい加減にしろよ。
まともに制御できないくせに、またこの力に縋ったのか。
何が"仲間のため"だ。
その仲間にさえ危険が及んでいるだろうが。
つくづく屑野郎だな、俺は……
周囲に何もない、ただただ真っ暗なだけの空間。
ブランクが意識を失いながらに目覚める、彼だけの世界。
この世界で目覚めたのは、これで3度目だ。
1度目は、本部防衛作戦でスコーピオに殺されかけた時。
2度目は、先ほど適合者の亡骸を喰らった時。
しかし、この3度目は何か様子が違うらしい。
過去に"ここ"で目覚めた時は、自分の存在を自覚した直後に、思考と理性が薄れる感覚がきた。
この3度目には、その感覚がまるでない。
意識もはっきりしている。
思考も理性も、ちゃんと人間性を保っている。
「……」
ブランクは今の状況に困惑しつつ、暗闇の中に何かないかと、周囲を見渡す。
「……!?」
周りに光源は全くない。しかし、段々と目が慣れてきて、周囲の暗闇に何があるかが見えてきた。
ここは、なにもない"ただの暗闇"じゃなかった。
周囲にあったのは、黒ずんだ無数の死体の塊だった。
無数の死体が、まるで壁のように積み重なって、ブランクを囲んでいた。
下半身が消失した兵士。
頭部の左半分を齧り取られた民間人。
腹部を引き裂かれた同期。
心臓と肺を刺し貫かれた上官。
死体の一つ一つに見覚えがあった。
忘れるはずがない。
ここにある死体は、助けようとして助けられなかった人々だった。
恐怖、苦悶、絶望に染まった死に顔の一つ一つを心に刻み、その無念を背負い、戦い続けた。
何度繰り返したことか。
「………そうか、そうだったな。……俺は、犠牲にしてしまった無念を晴らすために……戦ってきたんだ」
自分を取り囲む死体の中心で、そっと目を閉じた。
死者たちに黙とうを捧げ、その無念の全てを背負い戦い続けるために。
再び目を開けた時、ブランクの世界に一つの変化が生じた。
死体の暗闇の真ん中、自分の正面に誰かが立っている。
暗くて顔は見えない。ただ、薄ぼんやりとシルエットは確認できる
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ