第二百四十六話 妖術破りその五
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攻めに入った、その時謙信もだった。
彼は自ら刀を手にしてだ、馬上から二十五人の黒備えの大名達に言った。
「それではです」
「はい、我等もですな」
「武田殿と共に」
「敵を攻めますな」
「わたくしも行きます」
謙信は毅然とした声で言った。
「そしてこの手で」
「魔界衆を討つ」
「ここで」
「行きましょう、悪を討ちに」
こう言って彼もまた馬を駆った、孫子の旗と毘沙門天の旗は並んで進みだした。
軍の先頭では幸村と兼続がそれぞれ戦っていた。二人共馬に乗りそのうえで采配を採りつつ武器を振るっていた。
幸村は二本の槍を、兼続は二振の刀をだ、それぞれの手に持ち。
右に左に振るっていた、二人の周りには血煙が、首に腕に胴が乱れ飛び朝の大地を紅に染めあげていた。
その中でだ、幸村は彼と共に戦う十勇士に言った。
「御主達もじゃ」
「はい、我等もですな」
「ここが正念場ですな」
「ここで必死に戦い」
「そのうえで」
「思う存分倒すことじゃ」
魔界衆の者達をというのだ。
「よいな、倒し尽くす勢いでいくのじゃ」
「畏まりました」
「では」
「拙者も戦おう」
兼続もだ、自ら激しく戦いつつ言う。
「もうすぐ謙信様が来られる」
「それまでにですな」
「一人でも多くの敵を倒します」
幸村にもこう答える。
「この様にして」
「ですな、それではそれがしも」
幸村だった、こう言ってだった。
二本の槍で戦いつつだ、兼続に言うのだった。
「こうして戦いまする」
「一人でも多くですな」
「倒しましょうぞ、信玄様が来られるまで」
まさにその時までというのだ。
虎となり戦い申す」
「虎ですか」
「はい」
まさにというのだ。
「そうして戦いまする」
「ではそれがしは龍です」
兼続はこちらの獣を出した。
「そうなり申す」
「では龍虎として」
「戦いましょうぞ」
「さあ、どんどん来るのじゃ!」
「我等はここぞ!」
十勇士達は魔界衆の者達に叫んだ。
「逃げも隠れもせぬ!」
「かかって来い!」
「誰であろうが倒してみせる!」
こう言ってだ、実際に次から次に敵を倒していた。
その状況を見てだ、魔界衆の将帥達は眉を顰めさせて言った。
「手強いな」
「真田幸村と十勇士か」
「それに直江兼続か」
「都でもてこずったが」
「ここでも出て来たか」
「強いな」
「まことにな」
こう言って歯噛みするのだった、だが。
それでいてだ、彼等は余裕を以てこうも言った。
「しかし今のうちじゃ」
「そうじゃ、御前様達が妖術を使われてばな」
「それでじゃ」
「流れは変わる」
「一気にな」
こう言うのだった。
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