第二百四十六話 妖術破りその四
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「そしてそのさらに先陣をな」
「上様が命じられました」
「あえて我等の」
「御主達の役目は大きい」
信之は二人にこうも言った。
「思う存分戦ってくるのじゃ」
「そうしてきます」
「必ず」
「ではな、任せたぞ」
こう言ってだった、信之は先陣の己の場所に戻った。そうして日の出と信長の命が下るのを待った。するとだった。
夜明けになりだ、日が見えるとだった。
信長はすぐにだ、全軍命じた。
「攻めよ」
「はい、これより」
「陸も海もじゃ」
水軍もというのだ。
「共に攻めよ」
「さすれば」
傍に控えている森蘭丸が応えてだった、彼が傍の兵に法螺貝を吹かせると。
織田家の軍勢は鬨の声をあげて前に進みはじめた、その彼等と同時にだった。
魔界衆の軍勢も前に進みはじめた、その本陣において。
老人は魔界衆の棟梁達にだ、こう言った。
「ではじゃ」
「はい、いよいよですな」
「敵が動きました」
「さすれば」
「勝つ時じゃ」
まさにその時が来たというのだ。
「わかっておるな」
「はい、もうです」
「妖術を出せます」
「それこそ今にも」
「使えまする」
「そうじゃな、しかし切り札は出さぬ」
そう迂闊にはというのだ。
「敵を思いきり引き付けな」
「そして、ですな」
「ここぞという時に使う」
「敵に最も害を与えられる」
「その時にこそ」
「それ故にじゃ、わしの命を待て」
こう言ってだ、棟梁達を迂闊に動かさせないのだった。そのうえで今は兵を動かせているだけであった。
織田軍と魔界衆の軍勢との戦ははじまっていた、信玄と謙信がそれぞれ左右に分かれて先陣を務め采配を振るっていた。
信玄は馬上からだ、軍配を手に命じていた。
「よいか、ただ攻めるのではない」
「火ですな」
「その様に攻めるのですな」
「そうじゃ」
小山田と穴山信君にもこう言う。
「激しく攻めよ、特にな」
「はい、幸村ですが」
彼の父である昌幸が言って来た。
「今自ら槍を振るいです」
「戦っておるな」
「左様です」
「それは何より、ではじゃ」
幸村の奮戦を彼の父から聞いてだった、さらにだった。
信玄は周りにいるかつて彼が率いていた今はそれぞれ大名となっている二十四人に対してだ、こう言った。
「御主達もじゃ」
「はい、我等も」
「これよりですな」
「攻めそのうえで」
「敵を破るのですな」
「わしも行く」
信玄自らもというのだ。
「そして攻めるぞ」
「よし、ではじゃ」
「我等も続くぞ」
「赤備えの力見せてやるのじゃ!」
武田の者達は一斉にだった、馬を駆り槍を手に取ってだった。
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