第二百四十六話 妖術破りその二
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そのうえでだ、今ここで言うのだった。
「それは破られる」
「あの旗によって」
「必ず」
「だから安心せよ」
こう言うのだった。
「御主達もな」
「わかっておりますぞ」
「そのこともまた」
これが二人の返事だった。
「所詮は左道、何ということはありませぬ」
「この世に決して破れぬものなぞありませぬ」
「左道は左道、それは天下を乱しことすれ」
慶次は余裕を以て言うのだった。
「それだけです」
「手に入れることは適わぬというか」
「若しそれが出来ていれば」
慶次は己の叔父である前田に己の考えを話した。
「とうの昔にあの者達は天下を手に入れておりました」
「そういうものか」
「邪道ではです」
「それは出来ぬか」
「それが出来るのは正道のみでしょう」
天下を手に入れられるものはというのだ。
「それがしはそう考えますが」
「その通りじゃな」
前田も甥のその言葉に頷いて答えた。
「所詮邪道に過ぎぬしな」
「邪道は徒花に終わるのが常」
「それは何故じゃ?」
「根がないからじゃ」
慶次は可児の問いにもすぐに返した。
「仏教も陰陽道も全て根がありな」
「無論武士にもじゃな」
「根がある、それで人の世を正しくしたいというものがな」
「公が」
「それがある、しかし連中は恨みだけ」
日本への、というのだ。
「それだけの奴等ではな」
「根はないか」
「それがないからな」
「確かにな、恨み憎しみだけではな」
「そうしたものは肥やしにはならぬ」
可児もこう言ったのだった。
「何も育たぬわ」
「恨み憎しみが増すだけでな」
「それでしまいじゃ」
「そういうことじゃな」
「うむ、そうしたものには負けぬ」
慶次ははっきりとした声で言い切った。
「絶対にな」
「そうじゃな、ではな」
「一番槍を争うか」
「日の出になればな」
「先陣は今日は幸村殿と直江殿じゃ」
前田は二人にこのことも言った。
「そのお二人と共に行くか」
「そうしてきます」
「そして派手に暴れてきます」
二人は前田にまた笑って答えた。
「これよりです」
「そうしてきます」
「ではな、張り切って敵を倒してこう」
前田は笑って二人に言った、そのうえで慶次にこう言った。
「それで慶次、御主はな」
「はい、それがしはです」
「この戦が終わればか」
「申し訳ありませぬが」
「よい、御主の好きな様にせよ」
鷹揚な物腰でだ、前田は慶次に答えた。
「天下で遊ぶなり他の家に仕えるなりな」
「実は上杉家に惹かれておりまして」
「直江殿と親しいしな、御主は」
「どうもあの方を通じてです」
「上杉家にか」
「惹かれています」
「なら行くがいい」
その上杉家にというのだ。
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