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真田十勇士
巻ノ三十二 会見その六

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「攻めるぞ」
「はい、それでは」
「これより一気に攻め」
「そして、ですな」
「真田家を降らせる」
「そうしますな」
「うむ、そうするぞ」
 こう言ってだ、鳥居は自ら采配を執り矢面に出てそのうえで兵を動かした。大将自らが前面に出たのを見てだ。
 昌幸は櫓からだ、その鳥居を見つつ信之と幸村に言った。
「やはり鳥居殿はな」
「はい、徳川家の将ですな」
「まさに」
「ご自身が陣頭に立たれておるわ」
 そのうえで全軍を叱咤激励して動かしていた。声は大きく動きもいい。
「矢面に立たれていてな」
「あの距離ならです」 
 信之もその鳥居を見つつ言う。
「矢が届きますな」
「鉄砲もな」
「はい、あえてああして危うい場所に出られてですな」
「采配を執るというがな」
「徳川家の将ですな」
「徳川家は将自ら危うい場所に出る」
 そしてというのだ。
「そのうえで采配を執るのだ」
「後ろの安全な場所にはおらず」
「そして戦うからな」
 それでと言うのだった。
「兵達も奮い立つのじゃ」
「将自らそうするからこそ」
「無論家康殿もそうされることが多い」
 その棟梁である彼もというのだ。
「だからあの家は忠義の家でな」
「まとまってもいるのですな」
「そうじゃ、そして勇の者が多いのじゃ」
「そうして将も兵も自ら攻めるので」
「まさに将兵が一つとなる」
「それが徳川家の戦ですな」
「そういうことじゃ、強いぞ」
 昌幸はその目を鋭くさせて言った。
「厳しい戦になるのは確かじゃ」
「左様ですか、やはり」
「ではこれより戦となる」
 昌幸は息子達にあらためて告げた。
「よいな」
「はい、それでは」
「これよりです」
 信之だけでなく幸村も言った、今度は。
「敵を迎え撃ちましょうぞ」
「父上の策通りに」
「敵の数は多く強い」
 そのことを完全に頭に入れての言葉だった。
「ならば正面から全力で迎え撃つよりもじゃ」
「まずはその一撃をかわす」
「そうされますな」
「一太刀目はかわす」
 こう言うのだった。
「そこからこちらが仕掛けるのも剣術じゃな」
「はい、確かに」
 幸村は父のその言葉に頷いた、三人共赤い具足と陣羽織であるが武田家から受け継いたものである。無論他の将達も兵達も同じだ。
「それでああされたのですな」
「強き一撃はまずかわしてじゃ」
「それからこちらが攻める」
「この度はそれじゃ、まずはかわす」
 その一撃をというのだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「わしは本丸におる」
 そこにというのだ。
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