巻ノ三十二 会見その一
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巻ノ三十二 会見
信之と幸村達は幸村の十人の家臣達を連れて徳川家の陣地に入った。黄色のその陣の中に入るとそこにいた兵達は。
皆鍛えられた身体に強い光を放つ目を持っていた。その彼等を見てだ。
幸村は小声でだ、信之に言った。
「武田家との戦のことは聞いていましたが」
「そうじゃな」
信之も小声で応える。
「強者達じゃ」
「どの兵も」
「やはり三河武士じゃ」
こうも言った信之だった。
「強い者達じゃ」
「ですな、よく鍛えられています」
「そして整っておる」
ただ強いだけでなく、というのだ。
「我等を見ていてもな」
「動きませぬな」
「整列して微動だにせぬ」
そして道を開けてだ、彼等を通しているのだ。どの兵達もその手に槍や鉄砲、弓矢を持ち不動の姿勢で立っている。
「武田の兵と渡り合ったのもわかる」
「ですな」
「三方ヶ原のことは道理じゃ」
「あの時徳川家は敗れましたが」
それも惨敗だった、主の家康も九死に一生を得た戦だった。
「ですが徳川の兵は皆前を見て死んでいました」
「背を向けて死んだ者はいなかった」
「それが何故かわかりますな」
「これだけの者達ならばな」
「そうなるも道理ですな」
「全くじゃ」
「そしてですが」
ここでまた言った幸村だった。
「これより鳥居殿の下に参りますが」
「我等もな」
「はい、このままですな」
「臆することなくな」
「そして礼儀を守り」
「参ろうぞ」
「ですな」
こう話してだ、そしてだった。
彼等は鳥居の前まで来た、そして一礼すると。
鳥居は確かな声でだ、彼等に言った。
「顔を上げられよ、では」
「これよりですか」
「お話があり参られたのこと」
武骨であるが礼儀を守っている態度での言葉だった。
「さすればお話をして頂きたい」
「では」
信之が答えてだった、そのうえで。
一行は話に入った、茶を出されそのうえで。
鳥居は信之、幸村と話をはじめた。本陣の中は徳川家の旗本達がおり幸村の家臣達は二人の後ろに立って控えていた。
そのうえで話に入るがだ、ここで。
鳥居からだ、二人に言った。
「それでお話とは」
「はい、返事をしに来ました」
信之が答えた。
「先日の鳥居殿のお言葉で」
「ですか、では」
「はい、当家の返事ですが」
一呼吸置いてだ、信之は鳥居に言った。
「折角の申し出なれど」
「左様ですか」
「当家は当家で生きていく所存です」
「そのお言葉、間違いではありませぬな」
「はい」
やはり毅然として言う信之だった。
「左様です」
「そうですか、わかり申した」
鳥居は確かな表情で答えた。
「そのことは」
「左様ですか」
「
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