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鎮守府の床屋
前編
11.祭だ祭だっ!!(後)
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焼きそばが焼ける音に負けないほどの音量が、周囲にこだまをまき散らしつつ、どこかから聞こえてくる。音の方向から察するに……

「やぐらかッ?!!」
「クマッ?!」

 俺と球磨は憤怒の表情で暁ちゃんとビス子から迫られてる現実から逃避するようにやぐらの方を向いた。そこにいるのは……

「浴衣姿の川内ぃぃぃイイイイ!!」
「ハーッハッハッハッ!!! 今宵は祭……これぞまさに夜戦!!! これからは私の時間だよッ!!」

 いや、すんません川内さん。意味わかりません。ほんと、意味わかりません。

「意味わかんないクマ……」
「とうッ!」

 もはや呆れを通り越して困惑の感情しか沸かない俺達を尻目に、川内は浴衣姿のままやぐらからジャンプして飛び降りた。クアッドコーク1800ばりのきりもみ回転をしつつ地面に着地すると、そのセクシーな太ももをサッと浴衣で隠した。なんでお前今日も探照灯を装備してるんだよ?

「えっちいクマッ!」

 『バゴォオオオン』という炸裂音と共に久々の球磨のツッコミが俺の頭に炸裂し、俺の脳が揺さぶられたのと同時に、川内が俺達にそのフラッシュライトのような笑顔を向けていた。

「だって祭といったら夜戦だからね! 探照灯はつけてなきゃ!!」
「いや……ほんといみわかんないっす。すみません川内先輩。意味わかんないっす」

 ホントこいつは……顔は整ってるんだからもうちょっとおしとやかになればいいのに……せっかく浴衣も似合ってるんだから。

「そらぁ神通の浴衣だからね! 神通おしとやかだったし、これで私もおしとやか度が……」
「いや全然アップしてないから。仮にアップしててもおてんば度がさらに跳ね上がっててトータルマイナスですから」
「まぁいいじゃん! 私も焼きそばほしいな〜」

 未だに脳震盪を起こしている俺と、アホ毛から水蒸気を吹き出してぷんすか怒っている球磨を無視して、川内は焼きそばを焼く提督さん夫妻の元に行き、『青のり! 青のり!!』と言っていた。

「ところでさー球磨」
「クマ?」
「なんでやぐらなんか建てたんだよ? 今んとこ川内の登場シーンにしか使われてないぞ?」
「クックックッ……よくぞ聞いたクマ! ……加古ッ!」

 まるでその質問を待っていたかのように、球磨が加古の名を叫ぶ。つっても加古なんかどこにも見当たらんぞ? また自分の部屋で寝てるんじゃない?

「うああ……祭っつーのは……わかったから……寝かせ……」

 いやがった……やぐらの上で、会社勤めのお父さんの休日みたいな感じで寝てやがった……なんてやつだ……祭の当日、会場のどまんなかで眠りこけるとは……しかも俺がいるところからは、ぴくぴくと緩慢に動く加古の腕しか見えない。その様はさながらホラー映画のゾンビのよう
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