暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 3
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ざわざミートリッテを見ていたと言う神父。不審者扱いではなかったと安心する一方で予想外の言葉に驚き、思わず目を瞬かせてしまう。
 「女神アリアに仕える者としても人間としても未熟な私ですが、相談してくださいませんか? 身近な間柄ではないからこそ、何かのお役に立てるかも知れません」
 「あ……えっと……」
 ミートリッテは困った顔で視線を落とした。
 仕事熱心なのは良いが、その矛先をよりによって自分に向けないでほしい。
 悩みは確かにあるけれど、原因の半分くらいは女性受けしすぎな貴方の容姿です。貴方が昨日着任しなければ、女性の群れに恐れをなした海賊が怪盗に盗みを強要するという、ちゃらんぽらんな事態にはならなかったでしょう……などと、言えるわけがないのだから。
 「すみません……とても神父様にお話しできる内容ではありませんので」
 ぺこりと頭を下げると、神父は軽く首を傾げ……透明感に満ちた笑顔をミートリッテの目に刻み付けた。
 「そうですか……分かりました。ですが、私達はいつでも貴女方を見守っています。困った時には遠慮無く頼ってください。微力ながら、解決へ向けたお手伝いを約束致します」
 眩しい。厚意が目に痛い。
 背後に充満する真っ黒な霧や彼の領域を荒らす事への罪悪感が無ければ、ステンドグラスが魅力を引き立てる女神像にも劣らない芸術的な画だと、暢気に観賞していただろう。
 「……ありがとう、ございます」
 (私の死因は、女の一方的な嫉妬……か。短く儚い人生だったけど、まぁ悪くはなかったよ。うん)
 いろいろ諦めたミートリッテは、引き攣った笑顔でもう一度神父に頭を下げ、転身しようとして
 「あ。それと、もう一つ」
 またしても神父に呼び止められた。
 これ以上縮められる寿命は無いのだが。
 「私は、先日よりネアウィック村の教会での勤めを任されている神父・アーレストと申します。貴女のお名前を伺ってもよろしいでしょうか」
 アリア信仰流の挨拶か、左手を自身の胸元に添えて腰を折るアーレスト。
 「……ミートリッテです」
 ネアウィック村に「ミートリッテ」は一人だけ。裏稼業の都合上他人にほいほい教えたくはないが、女性達の手前こうも礼儀正しくされては無下にもできない。
 「ミートリッテさん、ですね。ありがとうございます。貴女に女神アリアの祝福が舞い降りますように……またおいでください。お待ちしています」
 別れの句だ。漸く女衆の無言攻撃から解放される……と、心からの喜びが笑顔に変わる。
 「ありがとうございます。失礼しました」
 嬉しそうなミートリッテに、ほんの少し目を丸くする神父。
 「……?」
 何か変だっただろうか?
 と思う前に、表情を戻したアーレストが扉に歩み寄って外への道を開いた。
 「お気を付けて」
 扉
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