5部分:第五章
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第五章
「で、どう?夢は」
「あの将軍様相変わらず出て来る?」
「そのことでうんざりしてたけどどうなの?」
「まだ出て来るの?」
「前よりは出る日がかなり減ったわ」
そうだとだ。静は答えた。
「テレビも観なくなったしドラマとかはネットで観て」
「で、そうした動画も観なくなった」
「そうして二人で飲んでよね」
「それで夢に出てこなくなったのね」
「枕の裏にバクの写真も入れてるわ」
それもしているというのだ。
「そうしたことをしていったせいでしょうけれど何はともあれよかったわ」
「その中で一番の処方箋はあれよね」
「あれしかないわね」
「そう、あいつと一緒にいることよ」
他ならぬ一輝と一緒にいる、そのことがだというのだ。
「もうそれで全然違うから」
「で、あの将軍様の代わりに彼氏が夢に出るようになったとか?」
「そうなったの?」
「そうなってきたわね。実家の親も出て来たりするけれど」
将軍様の代わりに親しい面々が出て来ているというのだ。
「一番はやっぱりあいつよ」
「彼氏ね」
「彼氏がなのね」
「いい夢を見るのってやっぱりあれなのよ」
将軍様を自分の夢に出さない、ここではそういうことでもあった。
「彼氏なり旦那と一緒にいる時間を多くすることね」
「好きな相手と出来るだけ一緒にいるようにする」
「それがいいってことね」
「それがわかったわ」
満面の笑みで言う静だった。やはりジョッキから手を離さない。
「もうこのまま。将軍様とはお別れよ」
「そうね。じゃあ私も彼氏ともっと一緒にいるようにするわ」
「私も。旦那と一緒にいよう」
「早く彼氏見つけないと」
同僚達もそれぞれ言う。そうして静はだ。
その同僚達にだ。こうも言うのだった。
「夢って大事よね」
「人生の何分の一かは絶対に寝るからね」
「その時に見るものだからね」
「というかその中に入るものだから」
夢の世界はある。絶対にだ。だからこう話す彼女達だった。
「いい夢見ないといけないわよね」
「そうそう」
「江戸川乱歩だったかしら」
この作家の名前も出て来た。我が国の推理小説の大家だ。所謂エログロという面から見てもかなり有名な作家である。少年探偵団でも知られている。
その作家の名前を出してだ。一人がこう言うのだ。
「現実はかりそめで夢の世界こそが事実である」
「じゃあその世界のあの将軍様ばかりっていうのもね」
「嫌な話よね」
「あんな強烈に嫌な奴が傍にいつもいるなんて願い下げよ」
「絶対にね」
「私もそうだったわよ」
実際に静もうんざりしていたのである。だからだった。
「いや、それが消えていって何よりよ」
「このまま全部消したいわよね」
「そうしたいわよね」
「勿論。だから
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