前編
10.祭だ祭だっ!!(前)
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北上、提督さん……と次々にお客さんが押し寄せてくる。基本的に一日の客数が少ないバーバーちょもらんまにおいて、これだけの人数の客が一日に来るのはまれで、7人もの客を短時間の間にさばいたのは随分久しぶりだった。おかげで俺もなんだか心がウキウキしている。
話を聞いてみた結果、浴衣を着るのは暁ちゃんと川内、そして妖怪アホ毛女の三人で、ビス子はディアンドルというドイツの服を着るみたいだ。この時点ではまだみんなに話を聞いてみただけで、誰がどんな服を来てくるのかは分からない。なんだかんだでみんなかわいくて美人だから、それぞれ似合っているんだろう。今から楽しみだ。……今目の前にいる、こいつ以外は。
「というわけで、今日のラストを締めくくるのは球磨だクマ」
「お前がラストか……」
そして今日のラストは、この妖怪アホ毛女で締めくくられる。こいつのアホ毛、どうしてくれよう……。
「おい球磨」
「クマ?」
「お前もたしか浴衣着るんだよな。どんな色のやつ着るんだよ」
「紺色の古式ゆかしい浴衣だクマ。似た感じの色の羽織も着るクマ」
「了解した。アホ毛はどうする?」
「切れるものなら切ってみるといいクマ」
「放置しとくか……」
床屋としてはシャクだけどな……こいつのアホ毛にかまけていたら、秋祭に遅れるかもしれんからな。一度球磨の頭をシャンプーしてやり、その後髪を整えてやる。びよんと立ち上がるアホ毛に屈辱を感じながら、丁寧に……
「なぁ球磨」
「クマ?」
「うなじ見せたりしないの?」
「しないクマ。キリッ」
丁寧に……
「なぁ球磨」
「クマ?」
「うなじ」
「見せないクマっ」
それはそれは丁寧に……
「球磨ー」
「しつこいクマッ!」
だってうなじしっかり見せた方が浴衣はカワイイんだもん……
……あれ? 俺もこんなにムキになる必要なくね?
――やっぱり自分の嫁の浴衣姿が気になるの?
うるせー北上。ここに来て妙なこと言って俺を意識させるんじゃないッ。
――ニヤリ
俺は自分の頭の上で右手をパタパタと振り、俺に余計な邪念を送り込もうと企む北上の邪悪なイメージを振り払った。
「何やってるクマ?」
「心配いらん。悪のイメージを振り払っているだけだ」
「?」
髪を球磨の要望どおりに整えたら、最後はいつものように両肩をポンと叩いて終了だ。球磨、おつかれさまでしたっ。
「ほっ!」
いつもならここで耳掃除もやってやるんだが、今日は別にいいだろう。本人も、今日はいつもみたいに『耳掃除もやるクマ!』って言ってこないしな。
「ところでお前ら、着付けは出来るの?」
「隼鷹が出来るから問題ないクマ」
あの妖怪飲んだくれ女にして提督さ
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