前編
10.祭だ祭だっ!!(前)
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始めた。うーん……あのイカをさばくスピード……さすがだね。
「ホッ! ホッ! ホッ!!」
昨晩、嫁の隼鷹に完膚なきまで叩きのめされた人だとは思えないなぁ。
「ハル」
「はい?」
「それは言うな」
「提督さんも俺を球磨のことでからかわないのならやめます。ニヤニヤ」
ハッスルしながらイカをさばいていた提督さんに別れを告げ、祭の会場になる鎮守府中庭に足を運ぶ。意外にも本格的に準備が進んでおり、球磨と川内が櫓を組み立て、北上と加古がやぐらと木の間にちょうちんをひっかけたワイヤーを渡していた。暁ちゃんは提督さんの夜店の準備をしているようだった。りんごあめを夜店の一角に並べていたのが見える。
「あ! ハル〜!!」
やぐらの上の球磨が、こっちに気付いて100万ドルの笑顔で手を降っていた。なんだかえらく輝いて見える笑顔だなぁ。
「球磨〜!! 何か手伝うことはあるか〜?!」
「そろそろ暁の仕事が終わるクマ!! そしたらハルは暁の髪を整えて欲しいクマ!」
ぉおなるほど。すでに提督さんのプランはみんなにも周知されてるようだ。球磨の方もあらかた準備は終わりつつあるようで、後を川内に任せて、やぐらの上から『クマッ!』と言いながら飛び降りてきた。俺の目の前で『ドスン』と着地し、『ふしゅう〜……』と鼻から水蒸気を出して余計な圧力を抜いたように見えたのは、おれだけじゃないはずだ。
「分かった。お前たちは?」
「球磨たちも終わり次第、順繰りにハルのとこに行くクマ。今日はハルも大忙しクマよ?」
「分かった。……お前も浴衣着るの?」
「んふふ〜。着るクマ!!」
胸を張り、得意げにこう答える球磨を見ながら、『どうせ猿に烏帽子だろ……』と思ってしまった俺は悪い子でしょうかじい様……。
「なーにー? やっぱり自分の嫁の浴衣姿が気になるの? ニヤニヤ」
木の上から北上が、ニヤニヤしながら見ていた。
「アホなこと言うな!!」
「誰が嫁だクマッ!!」
「えー。球磨姉に決まってんじゃん」
「よし。ちょっと降りてくるクマ。ねえちゃんが魂のこもった熱い折檻をしてやるクマ」
「やーだよ。球磨姉に張り倒されちゃうからね」
「クマァ〜……」
一瞬だけ俺も頭に血が上ったが、木の上で球磨をからかう北上と、木の下でからかわれる球磨ののどかな光景を見て、そんな気持ちもなんだか萎えた。平和だなぁ……。
「ハル! 私、行けるわよ!!」
俺がピースフルな気持ちで仁義なき姉妹ゲンカを眺めていたら、夜店の準備が終わったと思しき暁ちゃんが話しかけてきた。
「おっ。暁ちゃんおつかれ」
「途中、りんごあめをつまみぐいしそうになったけど、なんとか持ちこたえたわ!!」
つまみぐい? りんごあめをつ
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