第4話「やりこみ要素があればあるほどゲームは楽しめる」
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捨てるように双葉は言った。
確かにその通りである。
ゲームのデータはゲームでしか価値を持たない。
現実に反映しもしない、しかも跡形もなく消えるデータをやりこんで作る事は無意味だ。
データほど、もろい『証』は他にないのだから。
そんなモノに膨大な時間をかけるのは馬鹿げた事であるが――
それだけが、全てじゃない。
「セーブデータとか、んなモン関係ねーよ。ようは冒険をどんだけ楽しんだか、だろ」
頭を掻きながら、口を開く銀時。
そんな気だるそうな動きとは裏腹に深い想いが紡がれる。
「消えちまったら、また最初から冒険すりゃいい。そりゃ、めんどくせェかもしれねーが1回目で見つけられなかった宝箱とか拾えるかもしれねーじゃん。何回もプレイすりゃ新しい発見も増えて、その度に嬉しくなるもんだ。サブイベントにゃシナリオ一筋でやってたら手に入らねーアイテムがたくさん隠れてんだ。レアなお宝見つけたり、トラップに引っかかったり、プレイしてみなきゃ気づかねェ要素がゲームにゃ五万と転がってる」
そうして、銀時は双葉を見据える。
「わかるか?それはこの世の中にも自分の知らねー面白ェことが、まだまだたくさん転がってんのと同じ事なんだぜ。ゲームってのは、そうゆーのを身近に楽しませてくれるモンなんだよ」
それは美麗なムービーにはない感動。
イベントの数だけ笑いがある。
ミニゲームの数だけ楽しみがある。
だからこそ、RPGは面白い。
「それにな、本当に大事なデータってなァ何回電源切ろうがバグっちまおうが飛ばねーよ。ましてや魂に刻まれた記憶は、ずっと胸にあるもんだ」
「……だったら、刻まれなかった記憶は忘れるだけだな」
「いんや、意外と残るモンだぜ。そうやって忘れられねェ思い出が一つや二つと増えてくんだ」
銀時の言葉は確かに心に響くモノだった。
それでも双葉の表情は変わらない。
「……どうかな。残らないことだってあるさ」
皮肉げに口元を浮かべて双葉は言う。しかし、それは自らを嘲ってるように見えた。
どこか哀しそうな笑みが浮かんでいる妹を背にして、銀時は絶壁から真っ黒な天井を見上げ、自身の胸を軽く叩きながら言葉を返す。
「俺のプレイ日記はずっとここに残ってるよ。何でも書きとめてあらァ。メダル制覇した事とか、ワクワクしてダンジョン探索しまくった事とか、ビアンカを嫁にした事とか」
「……そうか」
静かに呟くと、双葉は氷のように冷めた表情をほんの少し緩ませる。
そして、少年みたいな微笑を浮かべる銀時に歩み寄って――
「だったら田舎娘と地獄へ新婚旅行してこい」
“ボカッ”
突然、双葉に背中を蹴られ、銀時は崖下へ落とされた。
「えええええええええええええ!?」
それもこれも、彼の最後
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