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【銀桜】9.たまクエ篇
第4話「やりこみ要素があればあるほどゲームは楽しめる」
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 それ故にいつ暴走してもおかしくない『獣』を抱えた双葉は、他人を遠ざけていた。
 そんな妹が誰かのために積極的に打ちこんでいるのを、本来なら喜ぶべきだろう。
 しかし、どうもそれとは違うと銀時は思う。
 無愛想な表情、堅苦しい口調 ――態度はいつもと変わらないが、兄である銀時はその微妙な揺れを見抜いていた。
 仕切ったり自分から周りをリードしていくのは、待ち切れず生き急いでいる行動の裏返しだ。それと同じように、落ち着かない仕草が目立つ彼女は焦っている感じである。また銀時には双葉が何かに苛立っている様にも見えた。
 それに双葉が他人の厄介事に自ら進んで深入りする時は、必ず裏がある。
「おいおい。オメーな〜にスタスタ歩いてんだ。ピオリムでもかけられたか」
「ヘイスト状態にはなっていない」
 妹を追いかける銀時にくるのは、やはり素っ気ない返事。
 ちなみに二人が言っているのは、それぞれドラクエとファイナルファンタジー(FF)における行動を素早くさせる魔法のことである。
 それはさておき。
 僅かにざらつく淡々とした口調から、双葉の焦燥を確かに感じ取って、銀時は敢えて気の抜けた事を言う。
「だったらなんで、そうせっせとクリアしたがるかねェ。のんびりやんねェと息詰まってゲーム放置プレイになっちまうぞ」
「借りをとっとと返したいだけだ」
「借り?」
 妹の口から出るには珍しい単語だった。
 銀時の財布で勝手にピザを注文する事から分かるように、双葉は他人の物でも我が物顔で使うことを平然とやる人間だ。
 貰える物はとことん貰う性格で、相手に対して遠慮なんて全くしない。むしろ奢られて当然と考える双葉は、結野アナのように命を救われるくらい大それた事や本人が恩義を感じない限り、めったに借りを返したりしない。
 それほど彼女の道理の基準は高いのだ。
 しかし、機械(からくり)たちの反乱(クーデター)を共に解決した銀時たちと違って、それ以降に万事屋に来た双葉にはたまと深い関わりはないはずだ。
 ただ一つ、あるとすれば……。
「嫌なんだよ、借りたままっていうのは」
 より冷めた目つきになって双葉は続けて言う。
「借りは返さなきゃ気が済まない主義なんだ、私は。……本人は覚えてないけどな」
 最後にそう呟きながら、双葉は少し遠くにいる『たま』に一瞬振り返った。
 不可解な発言に眉をひそめる銀時だが、双葉は向き直って更に言葉を紡ぐ。
「だいたい、長ったらしくゲームをプレイしてどうする。どれだけ極めて最強のデータを築こうと一瞬で消えてしまう。データなんて所詮そんなものさ。ボタン一つで全て消去される。呪文を唱えなければ今までしてきた冒険も無駄と化す『まがい物』だ。そんな事に時間を費やすのは、メインシナリオだけで十分だ」
 うんざりした声で吐き
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