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【銀桜】9.たまクエ篇
第4話「やりこみ要素があればあるほどゲームは楽しめる」
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王へ到達するまでの作戦は『じゅもんつかうな』】
 人差し指を立てて堂々と言い張る白血球王に――新八と神楽の白けた視線にも気づかず――銀時は不機嫌に眉を寄せてダラダラ言い返す。
「そんな消極的な策で魔王に勝てるわけねーだろ。オメーみてーなケチなパーティが、薬草持ち過ぎて宝箱もロクに開けられず、魔王に辿り着く前にMP満タンのまま全滅すんだよ。魔王やっつけるまでの作戦は俺に『めいれいさせろ』」
【笑止!貴様の指示で動いていたらパーティは全滅だ。たま様を救う勇者は、この俺。遊び人はルイーダの酒場で飲んだくれているがいい】
「誰が遊び人だ、コラ!!確かに俺は遊び人かもしれない。だが俺とビアンカの息子は天空の勇者になるんだ!ただの遊び人じゃないからね!俺は天空の遊び人だからね!」
【なら天空の遊び人は、宿屋の裏で田舎娘とぱふぱふにいそしんでい――】
“ボカボカッ”
 突然、二人の頭に一撃が走る。
 頭をさすりながら見上げると、冷徹な瞳で見下ろす銀髪の女がいた。
 口喧嘩し合う銀時と白血球王に仲裁の鉄拳を双葉が下したのだ。
「おい、双葉なにしやが――」
()れ合いをしている場合か!下らん事をしてないでさっさと行くぞ!!」
 いつも以上に重圧かかった声色で吐き捨てる双葉。
 あまりに凄味のある剣幕に押され、喋り通しだった銀時も白血球王も黙りこんでしまう。
 さっき同じように銀時とゲームで言い争っていたくせにそこは気にしないのか、双葉は他の仲間を置いてズンズン先へと進んで行ってしまった。
 そんな彼女を見ながら、ふくれっ面になって神楽は文句をこぼす。
「アイツだって人の事言えないネ。なにヨ、さっきから威張り散らしやがってェ。リーダーは私の十八番(おハコ)アルヨ」
 お気に入りの役割(ポジション)を横取りされ、不機嫌そうに神楽は双葉の背中を睨む。ずっと命令口調で、先導を切ってばかりの偉そうな態度が気に入らないのだ。
 しかし新八は足早く歩く双葉を見て、ふと思う。
「いや、双葉さん威張ってるっていうか……」

――焦ってる?


 新八と同じ事を銀時も悟っていた。
 薄々感じていたが、体内に入ってからの双葉は何かと積極的だ。
 基本的に双葉は他人と関わろうとしない。その原因が過去に参加した戦争にある事は銀時も分かっている。
 『攘夷戦争』――二十年前突如地球に襲来し、幕府を牛耳った天人に侍たちが起こしたクーデター。己の信念、大切な人を護るために、それぞれの理由を持った者たちが戦場を走っていた。しかし、そこで生まれたのは多くの悲劇と仲間の犠牲。
 双葉も大切なモノを失う恐怖を味わった。それでも戦い続け血にまみれた挙句、狂気の獣に駆られ、どうしようもない感情に蝕まれた。そして狂気の衝動は現在(いま)も彼女を襲っている。

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