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パパは不審者
2部分:第二章
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第二章

 しかしそれでもだ。彼は。
 その授業参観が終わってそのうえでだ。家に帰るとだ。
 背が高く茶髪でだ。気の強そうな顔の女の子にだ。こう言われるのだった。
「あのね、お父さん」
「何だ?」
 ちゃぶ台で二人で御飯を食べながらだ。女の子の話を聞く。その手に持っているお椀が実に小さく見える。
「今日のことか?」
「そうよ。またお巡りさんに捕まったのね」
「そうだ。困った話だ」
「困ったも何もよ」
 女の子は眉を顰めさせて父親に言う。
「その外見じゃ仕方ないでしょ」
「そう言うのか、御前も」
「言うわよ。あからさまに怪しいから」
 娘にまでこう言われるのだった。女の子は顔を思いきり顰めさせながらだ。そのうえでアジのフライを食べながら父親に言うのである。
「誰がどう見ても不審者よ。変質者よ」
「変質者か、お父さんは」
「そうよ。仕事場で何て言われてるのよ」
「阿部崎さんって言われてるぞ」
 彼の名字である。彼の名前は安部崎益男という。娘の名前は桃子だ。
「ちゃんとな」
「だから。不審者とか言われてない?」
「仕事中に警官が来て職務質問されることはあるな」
「それ自体がもう普通じゃないから」
 桃子は抗議する顔で父に言った。
「仕事場にまでお巡さんが来るって」
「だからお父さんは何もな」
「悪いことしてないっていうの?」
「そんなことは一度もしていないぞ」
 それは断言するのだった。
「本当にな」
「それで何で不審者に言われるのよ」
「何でだろうな」
 わからないといった口調だった。
「そう言わないのはお母さんだけだしな」
「お母さんって」
 見れば今食べているのは二人だけだ。その母親の姿は見えない。
「お母さんはそもそも人とあまり会わないし」
「そうだよな。漫画家だからな」
「今も締め切り近くて仕事に没頭してるし」
 それでだ。今は食事に出て来ないというのだ。
「まあ仕方ないな」
「そうよ。とにかくね」
「とにかく。何だ?」
「もう不審者って言われないようにして」
 これが娘の願いであった。何よりも強い。
「いいわね、そうしてね」
「だからお父さんは不審者じゃないぞ」
「誰もそう思わないから」
「困った話だな」
「いい?とにかく絶対によ」
 今度は茸の味噌汁をすすりながら言う桃子だった。実は料理はお母さんが作っている。まだ小学校五年の桃子には料理は難しいのだ。
「脱不審者よ」
「わかった。それならな」
 とにかくだ。益男は娘の言葉を受けてだ。何とか不審者から脱しようと考えた。そしてまずはだ。
 ロックシンガーの格好になってみた。黒い皮ジャンにレザーパンツだ。しかしだ。
 その外見で街を歩くとだ。すぐに警官達が来た。
「貴様!どの組織の男だ!
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