暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
プロローグ1 高町 なのは
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転入生と言うのであれば納得がいった。

 そう思っていると、彼はあっ、と何かを思い出したように咳払いをした。

「そういえば、まだ自己紹介をしてなかったな」

 彼は姿勢を正し、真剣な表情になって挨拶をする。

「俺は小伊坂 黒鐘(こいさか くろがね)。 明日から私立聖祥大学付属小学校の四年生として転入することになった。 よろしくな」

 そうして左手を差し出す彼に、私は反射的に答えた。

「私は高町 なのは。 私立聖祥大学付属小学校の三年生です。 こちらこそ、よろしくお願いします」

 彼の左手を握り返すために、私も利き手である左手を差し出し、彼と握手をした。

 その時、私の中で小さな何かが生まれた気がした。

 小さな違和感。

 気にしなければ、本当に気にならない程度の存在。

 雲のようにふわふわしてて、曖昧で、形すらないそれに、名前なんて無くて。

 けれどそれは確かに存在して、小さな熱を帯びていた。

 胸の中に生まれたそれに疑問を抱きながらも、私は彼を……小伊坂君のことを見つめた。

 さっき見た、寂しそうな瞳はもう見えない。

 けれど私は驚かされた。

「それで、高町はどうしてあんな寂しそうにしてたんだ?」

 ――――私のほうが先に、寂しそうにしている理由を聞かれたから。

 だけど、驚いたと共にある疑問に納得した。

 なんで私が、彼の瞳に釘付けになったのか。

 それはきっと、目を離せなかったからじゃない。

 彼が、目を離してくれなかったから。

 まるで心を覗き込むような瞳は、私の中に入り込んで離れなかったんだ。

 私の心を読まれた。

 そう思うと、羞恥で顔を赤くしてしまう。

「……ああ、ごめん。 気が利かなかったな」

 そんな私の心情を察してか、彼から先に折れてくれた。

「初対面の相手にそんなことを聞くなんてどうかしてるよな。 今のは気にしなくていいから」

「は、はい……分かりました」

 苦笑気味に謝る彼に、私は上手く返事ができず、顔を逸らしてしまう。

 こんな経験は初めてだった。

 人と話すとき、ちゃんとその人の言葉が聞きたくて、私は相手の顔をしっかりと見る癖をつけていた。

 なのに、こうして目を逸らしてまともな返事もできない自分は、初めてで、訳が分からなくなりそうだった。

「……と、ごめん。 これからちょっと用事があるから俺はこれで失礼するよ」

 何か言わないと、と思っていた所で先手を打ってくれたのはまた彼だった。

 少し駆け足でその場を去ろうとしながらも、こちらのことを笑顔で見つめてくれる。

 結局、最後まで気を使われてしまった。

 罪悪感ばかり
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