暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
プロローグ1 高町 なのは
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 ――――その日の夜、彼女/高町 なのはは夢を見た。

 真夜中の森。

 それは月明かりすら届かない漆黒の世界。

 野生の生き物の鳴き声。

 風で木々がざわめく音。

 自然に存在する当たり前の音だけが響くはずだった。

 そんな世界で小さな発光が起こる。

 蒼い光。

 人工的ではない、しかし蛍などではないその光は黒く蠢く“何か”と共に森の中を駆け巡る。

「はっ、はっ、はっ……!」

 次に、息を荒げながら走る声と音が聞こえた。

 幼い少年の声。

 見慣れない衣服に日本人ではない髪色、瞳の色をした少年が、黒い何かから逃げるように走っていた。

 森を抜けた先に、小さな湖があった。

 釣り堀なのか、小船がいくつか置かれていたそこで、彼は立ち止まった。

 それ以上先へは進めない。

 逃げることを諦めた少年は振り向き、立ち向かう選択をした。

 すでに全身は砂埃や擦り傷などで汚れ、満身創痍。

 しかし彼の瞳は決して諦めている人のそれではなかった。

 ポケットの中に右手を入れ、“それ”を取り出すと、迫る黒い何かに向けて伸ばす。

 ビー玉のように小さな、しかし真っ赤な輝きは小ささを感じさせない程の存在感を放つ球体を出すと、それは強い光を放った。

 それに次いで少年は何かを唱えた。

 聴き慣れた日本語の言葉なのに、その意味はわからない。

 わかるのは、その言葉を言い終えた所で黒い何かは強い光と共にその形を失い、霧散していったこと。

 蒼い光を放ったひし形の宝石だけを残して、少年も倒れたと言うこと。

 それが高町 なのはの見た、不思議な夢だった――――。


*****


 家族がいて、

 友達がいて、

 お家とベッドとご飯の心配をしてなくてよくて、

 学校だって楽しいのに、

 平凡な日常を幸せに、楽しんで生きてるのに――――

 なんでなのかな?

 寂しくなる理由なんて、どこにもないのに。

 悲しいような、苦しくなるような、

 行き場のない気持ちが――――胸の奥から出て行かない。

 私/高町 なのはは海鳴市の海岸沿いで、大声で叫んだ。

 言葉じゃない。

 ただただ、胸から出したかった感情を声に乗せただけのもの。

 誰もいないから、気にせずできた。

 スッキリしたいのに、涙が流れてきた。

 怒りのような寂しさは、波のように叩きつけてきて。

 それなのに、どうすればいいのか分からないもどかしさが、ストレスとなって再び溜まりだす。

 叫ぶ。

 叫ぶ。

 ただただ、叫び続ける。

 波が防波堤を叩きつけた音でかき消された
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