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暴れん坊な姫様と傭兵(肉盾)
10 命名『バッテン』
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テンって、何それー!?


 エルザ姫の渾身(こんしん)の命名はあまりにも衝撃的で驚きを隠せなかった。 いや、むしろ動揺(どうよう)した。
 自分は今まで色んな呼び名――ほとんど悪口――で呼ばれた事はあるけど…そんな呼ばれ方をしたのは人生で初めての事だった。

 レヴァンテン・マーチンことレヴァンテン、それを縮めてバッテン……そのバッテンってまさか…×(ペケ)のと言う意味でのバッテンなの!?
 それは…別の意味で色々と嫌だ!

「い、嫌ですよぉ!」

 目の前が最上級に偉い人である事も忘れて、つい反射的に嫌がってしまった。

「知るかアホ! 俺がそう決めたんだからお前はバッテンなんだよ!」
「そんなぁ〜…」

 しかしエルザ姫はそれを不敬(ふけい)だと受け取るどころか、物凄く独裁的(どくさいてき)に“バッテン”呼びを強調(きょうちょう)してきた。
 自分には、エルザ姫のワガママを押し返せるほどの気概(きがい)はなく、語尾(ごび)が消え入りそうなほどの小さくなってしまった。

 わかってはいるけど、僕ってば押しに弱い…。

「おらっ! さっさと行くぞバッテン!」

 有無(うむ)を言わさない押しで、エルザ姫は僕の腕を(つか)んできた。


 あ、(てのひら)が小さくて柔らか…―――。

「っ、うわぁぁあああ!?」

 僕の体が、体が(ちゅう)に浮くほど物凄い力で真横に引き寄せられた。

 風通しの良くなった門“だった”所を、(はじ)けるような瞬発力で通り抜けた。
 僕の悲鳴が遠く聞こえるほどに、エルザ姫という少女は、僕を戦場まで文字通り引っ張っていくのだった―――。


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