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暴れん坊な姫様と傭兵(肉盾)
10 命名『バッテン』
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行く事は出来ない事情が…」
「でもそれじゃ仕事にならないだろ?」
「……はい。 その通りです…」

 それを言ってしまったらおしまいである。

 色々言い訳しても傭兵(ようへい)は戦う事がお仕事。
 グダグダ言う前に戦え、四の五の言わずに戦え、黙って突撃しろ、が当たり前の扱いなんだから、戦えませんというのは通用しない。

 それが上司の、雇う側の理屈。
 この子もやはり他の雇い主のように、自分の(てい)たらくに怒って解雇(かいこ)してしまうのだろうか…。

 もうダメか…と、そう思ったが―――。


「―――…お。 そうだ」

 エルザ姫はポンッ、と握り拳で(てのひら)を打った。
 名案が浮かんだ、そんな顔をさせてエルザ姫は言った。

「なぁ、お前。 ちょっくら一緒に行かねえか?」
「え?」

 僕の今までの経験を(くつがえ)して、予想外にもそんな事を言い出してきた。

 しかしこれに待ったをかける。
 いくら何でもそれはおかしいのではないか、と自分でもわかる。

 僕が? 姫陛下と? そして何よりも…彼女は何て言った?

「一緒に? どこに?」
「そりゃ当然―――外だろ」

 エルザ姫はさっき僕が必死こいて閉めた扉の方をビシッと指差した。
 それは言うまでもなく…離れた所で戦場となっている外である。

「……ちょっと外を覗いてみたいとか、そういう意味じゃあ…」
「戦場に決まってんだろ。 俺が傭兵のお前をあそこに連れてってやろう、と言ってるんだよ」
「え」

 エルザ姫のとんでもない提案に―――僕は一瞬遅れて、驚愕した。


「え、えぇええーーー!?」

 何を言い出すのだろうかこの姫様は!

 色々と問題が…いや、それ以前にそんな事しても全然大丈夫とは思えない。
 というか姫陛下のみならず、自分の身の(あや)うさが感じられるほどに無謀(むぼう)に聞こえた。
 一国の王が、ましてや女子供であるエルザ姫がそんな事していいのか、自分は()かずにはいられなかった。

「あ、あのまさか僕と二人で!? 他の人は!?」
「いらん」
「へ、兵士とかは? 護衛とかは!?」
「いらん」
「あ、あの武器とかは!? 僕持ってないんですけど!?」
「いらん」

 え、ええぇぇぇ……何それ、無茶すぎる。

 思わず口を滑らせたような気もするけど、流石にこれは止めるべきと思った。
 命あっての物種(ものだね)……この姫様のためにも、そして僕自身の身のためにも。

「あ、あの」

 僕は姫様を何とか諫言(かんげん)しようとした……だが、時既(ときすで)に遅し。

「おら、さっさと行く……ぞっ!」


 ―――ドッカン
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