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暴れん坊な姫様と傭兵(肉盾)
10 命名『バッテン』
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 それは動揺を払拭(ふっしょく)させて、きっかけを与えた。
 具体性も何もなく、ちょっと頭の悪い号令(ごうれい)傭兵(ようへい)達は同調した。

『おおおおおおおお!!!』

 誰がそう言ったのかはわからないが、上下関係の無い下っ端の傭兵同士の間で命令なんて意味はない。
 ただ目の前の敵を倒す…その一点だけが皆同調して、一斉に駈け出していった。

 猛烈(もうれつ)な勢いで僕を下敷(したじ)きにしていきながら、剣を手に敵勢力へ突撃して行く。
 最後の一人まで僕を踏んでいって、一人取り残された所でようやく解放された。

「あいたた…たぁ……ああ、また置いてけぼりにされた…」

 背中のあちこちが痛みながら起き上がると、周りには誰もいなくなっていた。
 左右と前方にいた意地悪三人組も我先(われさき)にと突撃しに行っている。
 それも当然、ここでは日給が三食分貰えるとしても…言い()えれば“それだけ”である。
 もっと稼ぎたければ傭兵(ようへい)として敵を倒し、貢献(こうけん)した分だけ稼ぐのだ。

 連中は頭の中で(ドゥエ)の事しか考えておらず、逆にやられる事を考えていない。

 …とは言え、ここで一人取り残されているのも心細いものがあった。

「こ、怖いけど……僕も行かなきゃ…」

 背中には靴跡(くつあと)がいっぱいだが、傭兵(ようへい)の一人としてあそこに行かなきゃならない。
 それが傭兵(ようへい)(つと)めだし、やらなきゃ(ドゥエ)は稼げないのだから。

 そう思って立ち上がり、自分は腰にある剣に手を伸ばし―――。


 スカッ。


 …あれ? 腰にある剣に手を伸ばして―――。


 スカスカッ。


 ………腰にあるはずの剣が―――そこには無かった。


「え、えぇええっ…!? あれ、なんで、剣が無い……あっ―――」

 周りを見渡して剣の行方(ゆくえ)を探すが、僕はすぐに頭の(すみ)っこに置きっぱなしにしていた記憶を思い出した。

 そうだった……。
 自分は倉庫の物資整理(ぶっしせいり)だ。
 基本的に戦闘に参加する事はない…だから、自分の剣を倉庫に置きっ放しにしてたんだ。

「……ど、どうしよう」

 このままここにいて、ボーっとしているわけには行かない。
 かと言って武器もなしにあの乱戦に突っ込むのもありえない。
 逃げる? それもちょっと勘弁(かんべん)したい所だ。


 ……よし、こっそりと剣を取りに行こう。

 誰にも見つからず倉庫から自分の剣を取りに戻って、それからこっそりと戦闘に参加すれば大丈夫。
 これは仕方ない事だから、遅れて戦線に戻れば何とかな
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