ファーストミッション
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訳じゃないんだ。ただちょっと話がしたかっただけで……」
料理中の少女が困った表情を浮かべていると、後ろから手伝いの少年がフェイトに伝える。
「彼女と話がしたいなら、オーダーが全部済んでからにしてあげて。代わりに僕が話し相手になるから」
「わ……わかった……」
少年の言葉を聞いて、料理中に会話できる余裕が少女にはまだ無いと気づいたフェイトは、ちょっと事を急ぎ過ぎたと反省する。そのためできる限り少年の方から色々話を聞くことにした。
「それじゃあ、君の名前は?」
「ロック」
「ロックだね。なら彼女は?」
「リスべス」
「わかった。えっと……ロックとリスべスは二人だけでこの店を経営してるの?」
「そうだよ」
「……どうしてこの店をやろうと?」
「リスべスの両親がやってたから、店が潰れないように彼女が受け継いだ。僕は家族が実家ごと無くなってさまよってた所をリスべスに見つけてもらって、店の手伝いをする事で住まわせてもらっている」
「……」
ハードだった。フェイトも自分の生まれとかで色々葛藤や苦難があったが、使い魔やサバタのおかげで孤独感もなく家族と幸せな時間を過ごせた。しかしこの二人の人生は、サバタがいなくて母も姉も救われず孤独になった自分に匹敵するぐらい厳しいものだった。
自分は救われたが、この二人は救われていない。だからこそフェイトはこの二人の力になりたいと、そして仲良くなりたいと強く思った。
「お待ちどうさまでした。レバニラ炒めと回鍋肉、シューマイ定食二人前、から揚げ定食一人前、デラックスパフェです。ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「ああ、以上だ」
「では、ごゆっくりどうぞ」
118部隊が注文した料理が全て届けられたことで、少女……リスべスもフェイト達の下へやって来た。ちなみにフェイトが頼んだのはから揚げ定食である。何の気なしにから揚げを食すと、外はカリッとして中はジューシーで、子供が作ったとは思えない味にフェイトは目を丸くする。
「お、美味しい……! 私と同じくらいの年齢なのに、こんなに料理が上手いなんてすごいよ……!」
「ありがとうございます」
「リスべスが母親のレシピを必死に覚えて味を再現したものだ。美味しくない訳が無い」
「母親の……そっか。これはリスべスにとって母の味なんだね……」
親子の思い出が詰まったこの料理をフェイトはしっかり味わって食べ進め、綺麗に平らげる。向こうではフェイト達のやり取りを酒を片手に微笑ましく見守る大人達の姿があり、店内の雰囲気は表面上は明るいものとなっていた。そしてちょっとした歓迎会の夜は、静かに更けていくのだった……。
新暦67年9月17日、8時20分
隊
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