みたらし百番勝負
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をもだ。凌駕せんばかりの決闘が大阪において繰り広げられたのだ。
頼道に食われた団子の棒はアスファルトに突き刺さっていく。その棒が百本になった時にだ。
おっさんは彼の目を見据えてだ。こう問うのだった。
「どや」
「味やな」
「そや。みたらしの味はどないや」
勝負、この死闘の結果をだ。彼に問うのである。
「美味かったか。それともまずかったか」
「正直に言うで」
まだ口の中の団子を頬張って噛んでいる。そうしてくちゃくちゃさせながらだ。頼道もまたおっさんの目を見据えてだ。こう返したのだった。
「美味いわ」
「美味いんやな」
「ああ、百本食べたけれどな」
その食べた数もだ。しっかりと勘定していたのである。極限の勝負であるが故にだ。彼もまたその記憶力を普段より高めていたのである。
そのうえでだ。彼はおっさんに告げたのである。
「どの団子もめっちゃ美味かったわ」
「そうか。じゃあこの勝負は」
「おっさんの勝ちや」
不敵に笑ってだ。彼は己の敗北を認めたのであった。
「見事や。俺は負けたわ」
「そうか。負けを認めるか」
「これや。受け取ってくれや」
財布を出して札を渡す。五千円だ。
そしてそこに消費税として二百五十円出す。それを出し終わってからだ。
頼道はゆっくりと後ろから倒れていき難波の大地に倒れ伏した。アスファルトの上であるがそこが大地であることには変わりはない。
倒れそのうえでだ。彼は満足した顔で言うのであった。
「我が生涯に一片の悔いなしや」
「坊主、もっと大きな漢になるんや」
おっさんはその彼にここでも告げた。
「それで。もっと美味いもんを食うんや」
「そやな。俺はまだ登りはじめたばかりや」
頼道は今は倒れ伏している。しかしそれでもだった。
その目は死なずだ。彼にこう言わせたのであった。
「この果てしない。美食坂をな」
「未完にしとくで」
今大阪に巨大な岩の坂道と未完という巨大な文字が浮かび上がった。頼道はその二つを倒れ伏したまま見ながらだ。この敗北をこれからの大きな糧にせんと誓うのだった。敗れたがそれはだ。果てしない漢の坂を登るはじまりであったのだ。このみたらし団子を食う死闘は。
みたらし百番勝負 完
2011・6・8
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