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鎮守府の床屋
前編
9.季節外れの恐怖
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ら、もう安心ですよ

 その時、社の中には、誰かの服によく似た服を着た、二人の女の子がいた。一人は凛とした出で立ちが美しい、どことなく武士のような強さと芯の強さを感じさせる女性で……

――誘導がうまくいったね キラリーン

 もう一人は、服装こそ似ているが、明るく元気なアイドルのような女の子だった。理由はよくわからないが、その顔を見てるとなぜか張り倒したくなる感じの子だった。

「ハル?!」
「だだだだだいじょうぶ?!!」

 俺達からワンテンポ遅れて、川内とビス子の二人が社に入ってきた。そうだ。この女の子たちの服装、どことなく川内の服装に似てないか? アレンジこそ違うが、ベースは川内の服と一緒じゃないか?

 社の中にいた二人の女の子は、俺達の姿を見て安心したような、ホッとしたような笑顔を見せると、すぅっと消えていった。

「球磨」
「クマ?」
「今の見たか?」
「?」

 やっぱり見えたのは俺だけか……。

 改めて、社の中を懐中電灯で照らしてみる。すると、足元に臨戦態勢の白い猫が一匹いた。

「フーッ! フーッ!!」

 見た所、成人している子のようだが……思いっきり毛を逆立てて、こちらのことを殺る気満々のように見える。

 そして、猫の背後にいるのは……

「子猫がいるな」
「ぐったりしてるクマね」

 同じく白い子猫が一匹、横になっていた。かろうじて胸が上下しているのは見て取れるが、ぐったりしていて元気がないように見える。

「よし。ちょっと見てみるか」

 球磨を強引に下ろし、子猫に近づいて様子を見ようとしたその時だった。

「フギャー!!」
「ちょっと待て! 俺は様子を見たいだけだ!!」

 殺る気満々で臨戦態勢バッチリだった方の猫が俺に襲いかかってきた。ひょっとしたらこいつは、このぐったりしている子猫の母親かもしれない。自身の子供を守るのに必死になっているのか……思いっきり爪を立ててバリバリ引っ掻いてくるから、腕やら顔やらに生傷ができまくって痛い痛い……

「うう……い、痛い……」
「んふふー。球磨を地に立たせた罰だクマ!」
「んじゃ私が見てみよっか」

 川内がそう言いながら子猫に近づいた。一瞬、俺のように襲われて傷だらけになるんじゃないかと心配したが……

「ねーハルー。やっぱりこの子、具合が悪いみたい。ぐったりしてるよ」
「……つーかなんでお前、襲われないんだよ?」
「いや、わかんないけど……?」

 驚いたことに、川内は母猫には襲われなかった。川内は今、ぐったりした子猫を抱きかかえているが、それでも母猫は、そんな川内を攻撃するどころか、その足元でただひたすらに子猫を心配そうに見ているだけだった。

「んー……分かった。その
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