ブルボン 〜小さいおじさんシリーズ1
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トならやはり駄目だルマンドは」
「……なんですと」
白頭巾の目が険しくなる。どうも、豪勢も単に対抗意識や意地悪で云っている訳ではなさそうだ。
「昨日入荷されたということは、そのルマンドはその…未開封、ということだろう」
「!!」
羽扇がカラリと落ちる。端正の顔が嗜虐に歪んだ。…やっぱり相当嫌いなんだな。
「未・開・封!それでは仕方がない!貴様の案は不採用だ…ははは策士、策に溺れるとはこのことよ!!」
「ぐぬぬ…」
溜飲の下がる思いは分からんでもないけど、端正の露骨な喜びっぷりも微妙にカチンとくる。俺が今から台所に向かってルマンドを開封したら、こいつはどんな顔をするのだろうか。
「正直、キャラメル味とやらには少しぐっと来たが、やはり…なぁ」
豪勢がちらりとこちらを見る。目が合いそうになると、そっと目を逸らす。端正もちらっと見るが、やはりすぐに目を逸らした。
俺が奴らを見ない振りをしているように、奴らも俺は居ないものとして振舞うのが決まりらしい。そして『未開封の菓子には手をつけない』という妙な不文律があるっぽいのだ。今更勝手に開封されるくらい、何とも思わないんだが。
「成る程、開封されていれば文句ないのですね。それならば私が話をつけて参りましょう、あの巨」「わー!!」「わわーわうわぁー!!」
何か言いかけた白頭巾に、2人が飛び掛って口を押さえつけた。
「ふっざけんなこの頭巾、本当に貴様は度し難いわ!!」
「空気を読め空気を!!」
「お2人が見て見ぬ振りをしているのが不思議でならなかったのですよ。居るでしょ、そこに巨」
「黙れぇ―――!!!」
「分かるだろ!?完全に分かってやってるんだろ!?本っ当、性格最悪だな卿は!!」
「もし、そこの巨」
「殴るぞこらぁ―――!!!」
――あーもう面倒臭いな。俺は席を立ち、台所に向かう。…俺もな、お人よしだよな。これすらもあの白頭巾の策略の一部なのだろうな、と薄々感づきつつ。
戸棚に仕舞ってあったルマンドを開封しようとして、俺はあるものを見つけた。
ほほう、そう云えばこんなのも送られて来ていたな。
俺は『それ』を3本取り出すと、同時に開封した。そして少しだけ皿に出して夜食っぽくすると、余りを袋ごとこたつの上に放った。…考えてみれば、白頭巾の思惑通りに動くのも少し癪だし。
「……やや!?」
3人の小さいおじさん達が目を見張る。豪勢が細長い袋に駆け寄り、中の菓子を一枚取り出した。思った通り、奴らにとっては大判ソース煎餅くらいのサイズだ。
「なんだこの…ジャストサイズな感じは?」
「卿、載ってなかったか?スマホ、とやらに」
白頭巾は重々しく頷き、神託を告げるような声で叫んだ。
「…ブルボン・プチである!!」
豪勢と端正が雷に打たれたかのような表情で立ち尽くす
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