くだん
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「しらん。しらんがもともと、にわとりよてい」
俺はボウルを手にしたまま、天を仰いだ。…この状況から、どう盛り返してにわとり的なものになる気なんだろう。奴は奴で、ぷるぷる震えながら「こ…こけ…」とか呟きはじめている。奴なりに、今後の身の振り方を考えた結果なのだろうが…
「……なーに、大騒ぎしてるの……?」
居間のふとんが、もそりと動いた。やばい、やばい激やばい!!俺はボウルを抱えたまま、往来へ飛び出していた。
……以上のことを早口にまくしたて、先輩は拝むようにして無理矢理ボウルの中の生き物を俺に押し付けて逃げた。
それ以来3日にわたり、俺はこの四畳半で、変な生物と差し向かいで暮らしている。偶に「こけ…こけ…」と喉を震わせて鶏の真似をするが、明らかに何か別の生き物だ。人語を喋るし、顔は鶏というより人っぽい。
「こけ…こけ、こっこう」
また始まった。
「いいって、そういうのはもう」
「………とうてんこう」
「いちいち小賢しいなお前は」
先輩は「こ、こっちが落ち着いたら必ず、必ず何とかするから!!」と叫んで逃亡したが、落ち着くには少なく見積もって、20年はかかるのだろう。成人するまでが子育てです、とか言って。
成人した娘を送り出し、2人きりの平穏ながら少し寂しい生活が始まったあたりで
すっかり変なかんじに成長したくだんを平和なリビングに放り込んでやろう。
平穏な老後なんか送らせないぞこの野郎。
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