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俺の四畳半が最近安らげない件
先住民
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とかじゃねぇだろ!?」
他にもなんか色々言った気がするが、よく覚えていない。


「……その節はどうも……」
再び敬語に戻ってしまった。
「慣れてるよ。百万回聞いたよ」
表情とか感情表現の方法は分からないが、怒りとか憎悪みたいなものは感じない。こう、烏賊の全身から『諦観』がにじみ出ている。背中が煤けている。
「我々はこの星の先住民です!とか名乗れないだろ。かつての同胞、今やおつまみだもん」
何があったか知らないけどな…と、烏賊は口(?)の中で呟いて、触手をぶらぶら揺らした。
「行くとこないなら、名乗るしかないんじゃね?」
「『あなたがいま咥えている酒のつまみ、それが我が同胞の、なれの果てです!』って言うのか。いい笑顔で。『なとり』潰れるだろ」
「随分この星の事情に詳しいな」
「歩いてるもん。このままで」
「……そうなの!?」
「児童に蹴りを加えられる以外は、大した迫害を受けたことない」
ああ。着ぐるみか何かだと思われてるんだ。俺も、こうして話している今でさえ、実はこいつ着ぐるみなんじゃないかという疑いを消せないでいる。それにしても、なぜこいつが俺の前に現われてそんなぶっちゃけ話をしたのか分からず、とりあえず烏賊と暫く見つめ合っていると、烏賊はやおら手荷物を『ぼそり』と畳に置いた。缶ビール半ダースだ。
「ということで、お前の個人的な疑問を解決して俺がスッキリしたところで、お前には今日のことを忘れてもらう」
酒の力で!?
「な、なんか変なスイッチで記憶を消すとかじゃないの!?」
「そんな高度な技術持ってねぇよ」
「いやいやいや、アナログ過ぎだろ忘れねぇよそんなディープな話!たった半ダースで!!」
「そういうコトじゃねぇよ。酒をここに置いた時点で、俺のミッションは終わったんだよ。じゃあな」
烏賊はあっさりと去っていった。
奴の『ミッション』の成果は、後日イヤというほど思い知ることになった。


この星では、酔っ払いの話は毛の先程も信用されない。

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